ペースメーカ腹部植込み小児で、タブレット(タブレット端末・タブレットPC)内臓磁石による強制ペーシング (マグネットレスポンス)の報告がありました1。腹部に接する状態でのタブレット操作が原因で、胸部にデバイス植込みがされている成人例では注意されていなかった事項です。マグネットレスポンスが記録される機種の出現により発見され、これまで気づかれていなかった事象と推測されます。
 マグネットレスポンスによる強制ペーシングは、Spike on Tによる不整脈誘発と、頻回作動による電池消耗のリスクがあります。ICDにおいては、マグネットが接触している間、強制ペーシングははいりませんが、頻拍の検出・治療が停止する機種が多く、多くはアラート音が鳴りますが、鳴らない機種も存在します。また、機種によってはマグネットレスポンスの発生を把握できない(ログの記録が残らない)機種も存在するため、より多くの腹部植込みデバイスの症例で同様の事象、健康被害が発生している可能性があります。
 上記のタブレット(およびノート型パソコン)における電磁干渉は、小児のみならず、成人を含む、腹部に本体留置されている全ての患者様に想定される事態です。総務省から出されているPCの一般的な安全性データ(胸部植込み)に、腹部本体留置例は含まれておらず、安全性試験も施行されていません。上腹部でのタブレット操作で影響が出る可能性のある皮下植込み型ICD, リードレスペースメーカなどへの電磁干渉については現在調査中であり、また腹部植込みペースメーカについても、今後のデータの蓄積により電磁干渉を回避するための方策は変更される可能性がありますが、現時点では患者様に腹部本体部分から3cm (小児ではこぶし一個分)以上離して、タブレットを操作するようにご指導ください。

参考文献:

  1. 往田有理、他 タブレット端末により腹部植込みペースメーカに発生したマグネットレスポンスに関する検討 心電図 2024 ;44(3): 180-188.

一般社団法人 日本不整脈心電学会
理事長 夛田 浩
同 植込み型デバイス委員会
委員長 髙木雅彦