日本不整脈心電学会

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理事長挨拶

President

 この度、一般社団法人日本不整脈心電学会(JHRS)の第6代理事長を拝命いたしました。大変光栄に存じますとともにその重責に身の引き締まる思いです。

 本学会の会員数はこの2年間でさらに約1,000名増加し、12,075名(2024年7月現在)となりました。近年、力を入れて取り組んでいた非薬物治療に関する大規模な登録事業 (NEW JCDTR、J-AB、J-LEXなど) が成功し、その結果から日本の不整脈診療レベルの高さを海外に示すことができました。その他、心電図検定事業の成功なども本学会の大きな強みです。今後も不整脈領域ではさまざまな治療法が登場してくる予定で、不整脈診療の重要性は確実に増しています。

1)カテーテルアブレーションの件数は右肩上がりに増加し、年間件数は2020年に10万件を超え、2023年は112,870件でした。全体の3/4は心房細動に対するアブレーションであり、その平均年齢は67歳を超えています。高齢者人口の増加に伴い、心房細動患者が増加しているためであり、不整脈診療の中で特に心房細動診療(増悪因子の管理、抗凝固薬による脳梗塞の予防、そして症状の改善)の重要性が増しています。植込み型心電計に加えて低侵襲のパッチ型長時間心電図レコーダが近年、続々と登場し、心房細動は「見つける」時代となりました。また、アブレーションではパルスフィールドアブレーションが本邦でまもなく使用可能となり、心房細動アブレーションは新たな局面を迎えることとなります。

2)デバイス領域では、VDDモード搭載型の、あるいは抜去が容易なリードレスペースメーカが登場しました。また、植込みが容易な改良型の左心耳閉鎖デバイスが使用可能となり、これら両機器の植込み件数が増加しています。さらに、新たな心室ペーシング法として刺激伝導系ペーシング(最近は左脚領域ペーシング [LAAP])が報告されています。ペースメーカ適応の房室伝導障害患者や心臓再同期療法のための左室ペーシングが何らかの理由で施行できない患者を中心に、今後LAAPを行なう症例が本邦でも増えていく可能性があります。

3)遺伝学的検査の進歩と普及により遺伝性不整脈疾患と一部の心筋疾患において遺伝学的検査結果から致死性不整脈のリスクを同定することがと可能となっています。今後、遺伝学的検査を用いた診療と遺伝カウンセリングをさらに進めていく必要があります。

4)Apple watchなどのウエアラブルデバイスが普及し、得られた生体情報から健康管理を行たり、さらに心房細動などの不整脈の検出が可能となりました。同様に人工知能(AI)技術を応用して不整脈を早期に検出する、あるいはAIで不整脈のリスク評価をすることが可能となっています。ウエアラブルデバイスやAIは、今後の不整脈診療を大きく変えていく可能性があります。

 このように不整脈診療は多岐にわたり大きく発展・普及しています。今後、益々不整脈診療に関わる医療従事者、すなわち本学会の会員が担う役割が大きくなることが予想されます。本学会は臨床内科、基礎医学、外科、小児科、医工学、メディカルプロフェッショナル と様々な領域を専門とする多様な会員によって構成されていますが、各専門職が連携して診療にあたること(チーム医療)が極めて重要です。

 学会が果たしていくべき役割は、会員の皆様のご協力なしでは成し得ないものばかりです。本学会のさらなる発展のために尽力いたしますので、会員の皆様の御指導ならびに御支援をどうぞよろしくお願いいたします。

2024年7月21日

一般社団法人 日本不整脈心電学会
理事長 夛田 浩
(福井大学医学部病態制御医学講座循環器内科学)

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