日本不整脈心電学会

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2017年11月

住友直方(埼玉医科大学国際医療センター小児心臓科)

Q10歳女性。1歳、4歳で痙攣の既往がある。てんかんの診断で6歳まで抗痙攣薬を投与されていた。脳波は正常で、内服は親の判断で中止した。自転車に乗っていて急に意識を失ったため、来院した。安静時心電図、運動負荷時の心電図を示す。
正しいのはどれか。
1. 洞不全症候群 2. QT延長症候群 3. QT短縮症候群 4. Brugada症候群 5. カテコラミン誘発多形性心室頻拍
201711-1
回答と解説はこちらから   

【解答】

5

【解説】

カテコラミン誘発多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia; CPVT)はまれな疾患で、運動や情動の亢進、カテコラミンの投与で2方向性、もしくは多形性心室頻拍が誘発される遺伝性不整脈である。発症頻度は10,000人に1名以下とされるが、安静時心電図で特徴的な心電図所見がなく、心エコー、その他の形態学的評価でも異常を認めないため、一般人口での正確な発症頻度は不明である。原因として最も多いのは、リアノジン受容体(RyR2)遺伝子の異常である。常染色体優性遺伝(autosomal dominant:AD)形式をとり、全体の約半数を占めるとされる。10代もしくは20代に、運動誘発性もしくは緊張時の失神を認めた場合、本症を疑う。運動誘発性失神、痙攣、突然死の家族歴は30%に認めるとされ、本症の診断に有意義である。 CPVTの診断基準は、以下のように定義されている。17

  1. 器質的心疾患を認めず、心電図が正常な40歳未満の患者で、運動もしくはカテコラミン投与により、ほかに原因が考えられない二方向性心室頻拍、多形性心室頻拍、多形性心室期外収縮が誘発されるもの。
  2. 発端者もしくはその家族に、CPVTに関連する遺伝子異常を認めるもの。
  3. 発端者の家族に、心疾患を認めないにもかかわらず、運動により多形性心室期外収縮、二方向性心室頻拍もしくは多形性心室頻拍が誘発されるもの。
  4. 器質的心疾患、冠動脈疾患を認めず、心電図が正常な40歳以上の患者で、運動もしくはカテコラミン投与により、ほかに原因が考えられない二方向性心室頻拍、多形性心室期外収縮、多形性心室頻拍が誘発されるもの。
1、2、3は確定診断し、4は疑いとする。
治療としては、ß遮断薬、フレカイニドが有効である。植込み型除細動器(ICD)植込みが必要な症例もある。

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