2017年07月
岩崎 雄樹(日本医科大学循環器内科)
- Q80歳男性。永続性徐脈性心房細動で2ヵ月前にVVIペースメーカを植込んだ患者。退院時のデバイスチェックでは異常は認められなかった。1ヵ月前より、めまいを自覚するようになり、次第に症状が増悪するため救急外来を受診した。受診時の自覚症状はなく、ペースメーカ設定はVVI 70拍/分であった。入院後の病棟でのモニター心電図で図のような波形が確認された。以下で正しい所見はどれか?すべて選べ。
- 1. 心室リード刺激不全
2. 心室リード感知不全
3. ペースメーカ電池切れ
4. 自己QRS波形は見られない
5. ペースメーカの刺激出力を設定すれば問題ない
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【解答】
1と2
【解説】
本症例は、VVIペースメーカの感知不全および刺激不全の両者をきたしている。したがって、仮に刺激出力を上げて、刺激不全か改善したとしても感知不全が解消されないため、根本的な解決にはならない。左の2心拍はペーシングスパイクに引き続き心室筋が捕捉され、幅の広いQRS波形が認められている。しかしながら、左から3番目のペーシングスパイクに引き続いてQRS波形は出現せず、刺激不全となっている。左から4番目のペーシングスパイクの後の幅の狭いQRS波形は房室結節を介する伝導により形成されるもので、心室リードからのQRS捕捉ではない。右から2番目のペーシングスパイクは、自己心拍の幅の狭いQRS波形の後に出現しており、本来であれば心室刺激は抑制されなければならない。感知不全によりT波の頂点で心室刺激が加えられており、幸い刺激不全によって心室筋の捕捉はなく事なきを得ている。刺激出力のみを上げても感知不全は解消されないため、R on Tにより致死的心室不整脈に移行する可能性があり、危険である。