日本不整脈心電学会

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2017年02月

池田 隆徳(東邦大学大学院医学研究科循環器内科学)

Q40歳の男性。生来健康で医療機関への通院歴はなし。健康診断で初めて記録した心電図で異常を指摘され受診した。自覚症状はなく、血液・尿検査でも異常は認められない。心電図を示す。心電図診断はどれか。
a. 右胸心
b. 異所性心房調律
c. 陳旧性側壁梗塞
d. 左脚後枝ブロック
e. 誘導の付け間違い
201702-1
回答と解説はこちらから   

【解答】

a. 右胸心

【解説】

主要心電図所見
① Ⅰ・aVL誘導でQRS波形が陰性、aVR誘導でQRS波形が陽性
② Ⅰ・aVL誘導でP波が陰性、aVR誘導でP波が陽性
③ V1~V6誘導にかけてR波および波高全体が減高

調律は規則正しいが、正常洞調律のパターンではない。肢誘導を見ると、Ⅰ・aVL誘導でQRS波形の陰性棘が大きく、同時にr波が減高している。これらの所見から、右軸偏位、左脚後枝ブロック、あるいは(非Q波の)陳旧性側壁梗塞が疑われる。P波に注目すると、これらの誘導のP波の極性は陰性で、通常とは逆パターンになっているため、右手(赤電極)と左手(黄電極)の付け間違えの可能性もある。しかし、aVR誘導を見るとQRS波、P波ともに通常の極性とは逆パターンになっており、上記の所見では説明できない。胸部誘導に目を向けると、V1~V6誘導にかけてR波が徐々に減高し、波高自体も小さくなっている。これらも通常とは逆パターンであり、電極の位置が心臓(左心室)から遠ざかっていくような所見である。以上のことから、心臓の位置が左右反転した右胸心であると診断される。調律は正常洞調律と考えられる。

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