2016年11月
井上 博(富山県済生会富山病院)
- Q42歳の男性。腎細胞癌の手術前検査で記録された心電図。自覚症状はない。心電図診断はどれか。ひとつ選べ。
- a. 正常範囲
b. 前壁梗塞
c. 高Ca血症
d. ジギタリス効果
e. 非特異的ST・T変化
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【解答】
c. 高Ca血症
【解説】
主要心電図所見
1) QT時間短縮(実測値0.30秒、QTc時間は0.36秒)血清Ca値14.4 mg/dl時の記録で、一見してQT時間が短いことがわかる。Bazettの式で補正しても明らかに短い。本例のQT短縮の特徴は、ST部分が明らかでなく、QRS波からすぐにT波に移行していることである。つまり、QT短縮の原因はST部分の短縮による。QT時間の短縮を見た場合、①高Ca血症、②ジギタリス、③心筋虚血、④QT短縮症候群が鑑別の対象になる。本例では腎細胞癌摘出術後、血清Ca値の低下に伴ってQT時間は正常化した。QT短縮症候群は、K電流増大あるいはCa電流減少をもたらす遺伝子異常が原因となり、心房細動や突然死をきたすことがある。
※本例は、井上 博 編:心電図を読み解く.文光堂、東京、1997年、122頁、図4の症例に同じ。