日本不整脈心電学会

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2016年10月

井上 博(富山県済生会富山病院)

Q59歳の男性。リンパ節腫大で通院中であったが、最近脈が飛ぶ感じが出現するようになり、紹介受診した。心電図診断はどれか。該当するものをすべて選べ。
a. 左室肥大
b. 右脚ブロック
c. Brugada症候群
d. 1度房室ブロック
e. 左脚前枝ブロック
201610-1
回答と解説はこちらから   

【解答】

b. 右脚ブロック、d. 1度房室ブロック、e. 左脚前枝ブロック

【解説】

主要心電図所見 1) PQ時間延長(0.28秒) 2) 電気軸 約-70° 3) QRS幅延長(0.14秒)、rsR’パターン(V1

それぞれの心電図所見の判読は難しいものではない。本例はサルコイドーシスによる伝導障害が原因で、右脚ブロック+左脚前枝ブロック(二束ブロック)の所見に1度房室ブロックを合併した。PQ時間の延長が房室結節内、あるいは障害されていない左脚後枝の伝導遅延による(この場合は三束ブロック)のかは、心電図所見では判断できない。本例は、その後完全房室ブロックに移行した。4年前の心電図では脚ブロック、軸偏位、PQ時間延長のいずれも認められず、サルコイドーシスによる伝導障害が進行して完全房室ブロックに移行したものである。
肢誘導の左室肥大の診断基準(RⅠ+SⅢ≧25mm、aVLのR≧12mm)をいずれも満たすが、これらは左脚前枝ブロックの所見であり、左室肥大は本例では認められなかった。

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