前略
平素より日本不整脈心電学会へのご協力ありがとうございます。

 2017年9月に保険償還されたリードレスペースメーカ(MicraTM、メドトロニック社)は、本邦では既に5千例を超える症例に植込み手術がなされています。保険償還後、植込み手技に関連した種々の重篤な合併症が相次いで報告されたことから、日本不整脈心電学会は2017年 12 月および2018年12月に注意喚起を行い、さらに国内学会を通じて安全に関する啓発活動や合併症発生例に関する任意のレポート提出依頼も行ってまいりました。

 しかしながら、死亡率や合併症発生率の正確な実態が把握できておらず、死亡と重篤な合併症発生頻度に関して、学会として緊急にアンケートを送付し、調査をさせて頂きました。この度、学会員のご協力を頂き、以下のデータを得ましたのでご報告します。
 アンケート調査は2019年1月に配布し、2019年5月10日までに調査を行なった全ての植込み実施医療機関から回答を得ました。合併症発生に影響する、患者背景の詳細や術者情報などは不明であることにご留意ください。

植込み総数:4326症例   植込み実施施設:381施設
30日以内の死亡 38例 0.88%
心タンポナーデ 45例 1.04%
心タンポナーデ後死亡 4例 0.09%(心タンポナーデ内8.9%)
開胸手術あり 8例 0.18%(心タンポナーデ内17.8%)
開胸手術症例での死亡 2例
開胸手術なし 37例 0.85%(心タンポナーデ内82.2%)
開胸手術なし症例での死亡 2例
脱落 dislodge 17例 0.39%

 日本不整脈心電学会は、今回の結果を踏まえ、この度、再度注意喚起を行います。現時点では、原因は機器の不具合などによるものではないと考えておりますが、術後早期の死亡例が一定数あり、死亡に至らなくても種々の合併症(心タンポナーデや穿孔、デイスロッジなど)も相当数みられます。実施にあたっては、手技や合併症に対する施設体制の見直しだけでなく、適切な患者選択と植込み適応に関して施設(チーム)内でも再度十分検討を行い、合併症が発生した場合には適切な対応が遅滞なく行えるよう心臓血管外科医と密に連絡を取り合うようお願いします。また、患者さんおよび家族に対しては、術前に本治療に伴う上記リスクと現状(合併症の頻度および施設の体制を含めた内容)を十分に説明の上で、文書による同意取得を徹底いただきますようお願いします。
 また、植込み後に合併症の早期発見のため、これまで以上に注意深い患者フォローをお願い申し上げます。

草々

2019年6月1日

植込み型デバイス委員会委員長 安部治彦
植込み型デバイス委員会前委員長 新田 隆
植込み型デバイス委員会副委員長 栗田隆志 清水昭彦
植込み型デバイス委員会合併症対策部会長 野田 崇
安全対策委員会委員長 草野研吾
日本不整脈心電学会理事長 野上昭彦