パルスフィールドアブレーション(PFA)の普及に伴い、咳嗽の抑制を目的に、より深い鎮静・麻酔下で手技が実施される傾向が見られます。それに伴い、気道確保デバイスとして、iGel等の声門上器具を用いた呼吸管理の症例が増加していると推察されます。
 一方で、iGel等の声門上器具使用中に喉頭痙攣を発症した症例の報告が学会にも寄せられており、注意が必要です。喉頭痙攣は、窒息や呼吸停止を引き起こす可能性がある、命に関わりうる合併症として知られています。PFA施行中においては、咳やバッキングが喉頭刺激となって誘発される可能性も指摘されています。
 iGel等の声門上器具を使用する際には、各施設の使用基準や安全管理マニュアルに従い、適切な適応判断と準備のうえで実施してください。また、喉頭痙攣が発症した際の対応手順(換気方法、筋弛緩薬の使用可否、挿管対応等)を事前に確認し、チーム内で共有しておくことが重要です。
 安全なカテーテルアブレーション実施のため、呼吸管理においても十分なご配慮をお願いいたします。

喉頭痙攣発生時の対応フローチャートの1例

喉頭痙攣が疑われる兆候あり(下記のいずれか)

・カプノグラム上の呼吸曲線の消失

・突然の換気困難(バッグが硬くて押せない)

・吸気努力はあるが空気流入がない

・胸郭の動きが著しく低下 or 無呼吸

・SpO₂の急激な低下

iGel等の声門上器具位置・気道確保状態を確認(適切な挿入か、ずれていないか)

100%酸素によるバッグ換気を試みる(陽圧換気)

→反応がなければ次へ

口腔内・喉頭刺激を極力回避しつつ、鎮静薬(プロポフォールなど)を追加投与

※覚醒やバッキングが原因と考えられる場合

それでも改善しない場合:

筋弛緩薬(スキサメトニウム等)を静注

→気道の緊張を解除、挿管準備へ

筋弛緩後も改善しない、または迅速挿管困難な場合:

迅速挿管(気管挿管)を試みる

困難な場合は輪状甲状膜穿刺(最終手段)

日本不整脈心電学会
カテーテルアブレーション委員会 委員長 井上耕一
同 術中鎮静検討部会 部会長 宮内靖史
理事長 夛田 浩