着用型自動除細動器(WCD)の臨床使用に関するステートメント
日本不整脈学会 会頭 奥村 謙
WCDワーキンググループ
庭野慎一、栗田隆志、加藤律史、岡村英夫、関口幸夫、岩崎雄樹、松本万夫、新田 隆
平成26年1月1日付けで保険償還された着用型自動除細動器(Wearable Cardioverter Defibrillator: WCD、旭化成ゾールメディカル社製 LifeVest)は、欧米ですでに十数年の使用実績のある優れた医療機器であり、適正な使用によってより多くの症例の救命に寄与するものと考えられる。しかし、その臨床使用においては、症例の適切な選択ならびに適切な機器の理解を必要とするものであり、承認条件に関する厚生労働省の指示を受け、日本不整脈学会は以下の条件を満たすべきものと提言する。
1.WCD使用の施設条件
WCDの保険償還には、植込み型除細動器(ICD)移植術(K599)の施設基準に準じた資格が求められている。WCDを保険償還する施設は、ICD施設基準を満たさなければならない。
実使用に際しては、WCDに関係する医療従事者(医師およびメディカルスタッフ)が、機器を提供するメーカーが行う説明会(研修)を受講することが必須である。研修修了については、メーカーが施設単位でICD/CRT研修管理事務局(日本不整脈学会事務局)に届け出る。
2.WCDを処方する医師の条件
WCDを処方する医師は、ICD/CRT研修修了証の取得者であることを基本条件とする。
ただし、WCDに関する内容を含んだセミナー(平成26年2月以降)より前のセミナーで資格を取得している医師は、WCDに関する内容を含んだセミナーないし学会(日本不整脈学会、日本心不全学会、日本心電学会)が企画するWCDに関係する教育講演を受講した上でWCDを使用しなければならない。これらの追加受講については受講者がICD/CRT研修管理事務局(日本不整脈学会事務局)に自己申告※し、WCDに関する資格を取得する。この場合、ICD/CRT研修修了証の有効期限は変更されない。
3.WCDの使用期間
WCDの使用は原則的に3ヶ月を上限とし、その間にICD導入の是非を検討する。例外的に3ヶ月を超えてWCDを使用する場合は、原則的に保険適応外になることを留意して判断する。
4.WCD症例の社会的管理・安全性確保
WCD使用者の就労ならびに運転の可否は、ICDに準じて判断する。しかし、WCD使用者の本邦における社会的活動実態が把握出来ていない状況を鑑み、一次予防症例であってもWCD使用者は原則的に運転が許可されない。なお使用を中止した場合も、3ヶ月間は慎重な経過観察が望ましく、運転許可は保留すべきである。