日本不整脈心電学会

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心臓植込み型デバイスにおける遠隔モニタリングステートメント(2022年改訂)

2022年10月11日
一般社団法人日本不整脈心電学会
心臓植込み型デバイスにおける遠隔モニタリングステートメント作成WG
安部治彦、渡邉英一、鈴木 誠、加藤律史
西井伸洋、藤生克仁、堺 美郎、服部和子、前田明子

心臓植込み型不整脈デバイス(ペースメーカや植込み型除細動器など)には、デバイスの機能を監視し、不整脈イベントや生理学的パラメータなどの情報を医療従事者に転送する遠隔モニタリング機能が備えられている。

遠隔モニタリングのデバイス監視機能は対面診療と同等の精度で、リードやバッテリーをはじめとするデバイスの不具合、不整脈の検出および治療内容の確認などが、従来の対面診療に比べて早期になされることが示されている1~4)。さらに、遠隔モニタリングを採用することによる外来の臨時受診の削減5)、外来受診間隔の延長6)、入院期間の短縮7)および生命予後改善効果も報告されている8,9)

以上より、心臓植込み型不整脈デバイス患者において、標準的な管理手段として遠隔モニタリングの導入が推奨される。遠隔モニタリングの活用と普及のためにHeart Rhythm Societyが公表した「遠隔モニタリングに関するコンセンサスレポート」10)と「日本循環器学会・日本不整脈心電学会による不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版)」11)を鑑み、日本不整脈心電学会として、遠隔モニタリングの運用に関して以下のように提言する。なお、遠隔モニタリングには、定時送信(リモートインターローゲーション)と、異常を検出した場合に自動的にアラート送信がなされるリモートモニタリングがある。現在上市されているデバイスには、アラート送信機能がないものもあるため注意を要する。

1.患者同意取得と患者教育
  • 遠隔モニタリングの導入にあたり、患者には文書による説明を行い、同意を得るとともに診療録に記載する。同意書は自施設で作成しても、メーカーが作成したものを利用してもよい。
  • 遠隔モニタリングの有益性とその限界を説明し、緊急応答システムを意図するものではないことについて理解を得る。
  • 遠隔モニタリングの方法や頻度に加え、個人情報と遠隔モニタリングで得られたデータは、国外に設置されたメーカーのサーバーに安全に保存されることを説明する。
  • 遠隔モニタリングデータの確認や消去、および遠隔モニタリングの中止を希望する場合は医療機関に申し出るよう指導する。
  • 中継器の種類(設置型、携帯型、スマートフォンのアプリを利用するもの)と取扱説明を行い、通信が維持できる環境に設置するように指導する。また、中継器形態が変更される場合があることも説明する。
  • 診断機器である一部の植込み型心電計を除き、治療機器においては中継機器およびスマートフォンアプリなどでデバイスプログラミングは行えないことを説明する。
  • 中継器に問題が生じた場合には、使用説明書にあるメーカー相談センターに連絡をとるよう指導する。
  • 患者連絡先は最新の状態を維持するとともに、長期不在の場合は事前に医療機関へ連絡すること、および使用者が死亡した場合は家族より医療機関へ連絡するよう指導する。
  • 遠隔モニタリングを保険診療で行う場合には、身体障害者等級、自己負担額、および遠隔加算の点数変動などによって支払額が変わることを説明する。
2.遠隔モニタリング運用体制の構築と責任
  • 遠隔モニタリングを導入した場合でも、植込み後2~12週間経過時に対面診療を行うことを推奨する。
  • 遠隔モニタリングに加えて、年1回以上の対面診療を行うことを推奨する。
  • 遠隔モニタリングの導入は患者の理解や受容度に応じて考慮されるが、植込み後2週間以内など早期であることが望ましい。
  • 新規植込みの場合だけでなく、交換時やリコール対象となった場合も遠隔モニタリングを導入するタイミングである。
  • 医師を中心として、臨床工学技士、臨床検査技師、看護師、診療放射線技師や心不全療養指導士および診療クラーク(事務職)など、多職種による遠隔モニタリング運用体制を構築し、定期的に情報共有して密な連携を図ることが望ましい。
  • 遠隔モニタリングのスケジュール管理やアラート対応について、施設ごとに方針と手順を決めておくことを推奨する。具体的には、各メンバーの役割と責任、アラートの管理方法や対応可能時間、データ確認を行うスケジュールなどに関する院内手順を予め定めておくことが望ましい。また、状況に応じて適宜患者に連絡を行うなどの体制がとられていることが必要である。
  • 伝送されたデータを解釈し、その後の患者管理の決定にも関与するメディカルプロフェッショナルは、心臓植込み型不整脈デバイスに関して高い専門知識とスキルを有すること、もしくは植込み型心臓不整脈デバイス認定士(CIED MP)やCDR(IBHRE)資格を取得しておくことが望ましい。
  • 診療録には、イベントが発生した場合は要点を、さらに必要に応じてイベントサマリー(PDFファイルなど)を残すことが望ましい。特段のイベントがない場合でも遠隔モニタリングを施行している事実がわかるように、1ヵ月に1度記載をしておくことが望ましい。
    (診療録記載例):「遠隔モニタリングにより心臓植込み型不整脈デバイスの機能指標の計測 等を含めて評価を行い、著変を認めなかった」
  • 中継器の初回設置が遅れている場合や、送信が途絶えた場合は速やかに状況を確認し、安定した通信が得られるように配慮する。
  • 転居や転院を理由に、遠隔モニタリング管理施設が変わる場合は、診療情報提供書に遠隔モニタリング実施内容を記載し、スムーズに移行できるように配慮する必要がある。また、管理施設によって遠隔モニタリングの運用様式が変わることを説明する。

このステートメントは、「心臓植込み型不整脈デバイスにおける遠隔モニタリング」を適切に普及・運用するための指針である。また、将来、変更や修正が加えられることがある。

文献

  1. Varma N, Epstein AE, Irimpen A, Schweikert R, Love C, Investigators T. Efficacy and safety of automatic remote monitoring for implantable cardioverter-defibrillator follow-up: the Lumos-T Safely Reduces Routine Office Device Follow-up (TRUST) trial. Circulation 2010;122:325-32.
  2. Watanabe E, Kasai A, Fujii E, Yamashiro K, Brugada P. Reliability of implantable cardioverter defibrillator home monitoring in forecasting the need for regular office visits, and patient perspective. Japanese HOME-ICD study. Circ J 2013;77:2704-11.
  3. Guedon-Moreau L, Lacroix D, Sadoul N et al. A randomized study of remote follow-up of implantable cardioverter defibrillators: safety and efficacy report of the ECOST trial. Eur Heart J 2013;34:605-14.
  4. Parthiban N, Esterman A, Mahajan R et al. Remote Monitoring of Implantable Cardioverter-Defibrillators: A Systematic Review and Meta-Analysis of Clinical Outcomes. J Am Coll Cardiol 2015;65:2591-600.
  5. Landolina M, Perego GB, Lunati M et al. Remote monitoring reduces healthcare use and improves quality of care in heart failure patients with implantable defibrillators: the evolution of management strategies of heart failure patients with implantable defibrillators (EVOLVO) study. Circulation 2012;125:2985-92.
  6. Watanabe E, Yamazaki F, Goto T et al. Remote management of pacemaker patients with biennial in-clinic evaluation: continuous Home Monitoring in the Japanese at-Home study: A Randomized Clinical Trial. Circ Arrhythm Electrophysiol 2020;13:e007734.
  7. Crossley GH, Boyle A, Vitense H, Chang Y, Mead RH, Investigators C. The CONNECT (Clinical Evaluation of Remote Notification to Reduce Time to Clinical Decision) trial: the value of wireless remote monitoring with automatic clinician alerts. J Am Coll Cardiol 2011;57:1181-9.
  8. Saxon LA, Hayes DL, Gilliam FR et al. Long-term outcome after ICD and CRT implantation and influence of remote device follow-up: the ALTITUDE survival study. Circulation 2010;122:2359-67.
  9. Hindricks G, Taborsky M, Glikson M et al. Implant-based multiparameter telemonitoring of patients with heart failure (IN-TIME): a randomised controlled trial. Lancet 2014;384:583-90.
  10. Slotwiner D, Varma N, Akar JG et al. HRS Expert Consensus Statement on remote interrogation and monitoring for cardiovascular implantable electronic devices. Heart Rhythm 2015;12:e69-100.
  11. 野上昭彦., 栗田隆志. 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版). https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf
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