日本不整脈心電学会

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2018年4月

庭野慎一(北里大学医学部循環器内科学)

Q70歳の女性。健康診断で心電図異常を指摘されて来院した。毎年、心電図を含む健康診断を受けており、異常を指摘されたのは初めてである。特別な症候はない。
正しいのはどれか。1つ選べ。
1. 異所性心房調律を認める
2. 房室伝導の短絡(WPW症候群など)を疑う
3. 右脚側の心室内伝導障害がある
4. 心筋虚血を疑う
5. QTが延長している
回答と解説はこちらから   

【解答】

3

【解説】

完全右脚ブロックの心電図である。右脚側の興奮遅延があるため、QRS幅は延長する(≧120msec)。QRS後半時相に右側へ向かう興奮ベクトルが生ずるため、それがV1誘導でQRS後半の陽性波として記録される(「M字型」QRS波形)。対応する時相には、対側誘導(V5~V6誘導)で、スラー状の陰性波が記録されるのが特徴である。一方、P波は、aVR誘導を除くすべての誘導で陽性であり、洞調律興奮と推測される。PR間隔は0.18secで正常範囲であり、副伝導路による心室早期興奮を示すデルタ波も認められない。QT間隔は0.38秒で正常範囲である。V2~V4誘導に陽性U波が認められており、これをQTに含めれば延長と解釈できるが、特別な不整脈イベントを呈さない症例において病的意義を求める必要はないであろう。心室内伝導障害のある症例ではしばしば二次性のST-T変化が認められるが、胸痛など特別な症候を伴わない限り、病的意義を問う必要はない。なお、心室内伝導障害のなかでは、右脚ブロックよりも左脚ブロックのほうが病的意義が高いとされるが、本症例のように新たに認められた右脚ブロック症例では、心エコーなど簡易な検査で器質的異常の有無を検索しておくことが望ましい。

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