日本不整脈心電学会

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2018年6月

丸山徹(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター)

Q35歳の女性。風邪をこじらせた後に全身倦怠と息切れが持続するために来院した。聴診ではギャロップを聴取し、胸部X線では心拡大を認めた。心臓精査のために入院となった。入院時と入院一ヵ月後の心電図を示す。正しい診断はどれか。
a. 急性心筋梗塞
b. 異型狭心症
c. 急性心膜炎
d. 急性心筋炎
e. 拡張型心筋症
回答と解説はこちらから   

【解答】

d

【解説】

入院時の心電図は洞頻脈(124/分)で、低電位傾向を示し、V1~V3でR波の増高が不良である。またⅡ誘導、aVF誘導、V5、V6誘導でT波の陰性化を認める。しかし一ヵ月後の心電図は正常洞調律で、低電位傾向は消失している。本例は感冒様の上気道感染が先行しており、入院時の心臓超音波検査では左室壁運動がびまん性に低下し、左室壁は肥厚していた。血清トロポニンT値も上昇していたため、急性心筋炎と診断される。心筋の炎症や浮腫により心室起電力は低下して低電位傾向を示す反面、心室壁は肥厚しやすい。急性心筋炎に特徴的な心電図所見はなく、ST上昇、ST低下、陰性T波、異常Q波などさまざまな心電図変化を示す。また、時に完全房室ブロックや心室不整脈を認めることもある。心不全やショックに対しては集中管理が必要である。

〔日本不整脈心電学会編:「実力心電図―「読める」のその先へ-」日本不整脈心電学会、東京、2018;326~327を参照〕

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