ごあいさつ

 本邦においてエキシマレーザーを用いたリード抜去が保険収載されたのは2010年ですが、欧米に比べて10年以上のデバイスギャップが存在していました。このような状況の中、経静脈リード抜去術の適切な普及を目的として開始されたのが「J-LEX」です。

 2018年、わずか数施設からスタートしたJ-LEXは、2024年には登録施設数143施設、登録症例数は5,700例を超えるまでに成長しました。欧米で実施されているリード抜去術のレジストリが主にHigh Volume Centerの症例に基づいているのに対し、J-LEXでは国内のすべての施設における症例が登録対象である点が大きな特徴です。

 J-LEXのデータによれば、年度による若干の差異はあるものの、リードのいかなる部分も残さずに完全に抜去できた「Complete Removal」の達成率は93.6~96.6%、合併症発生率は3.8~5.6%、手術に起因する死亡率は0~0.2%と、欧米のデータと比較しても遜色がなく、本邦における術者および医療従事者の高度な知識と技術力を裏付ける結果となっています。

 これまでJ-LEXのデータは論文化されるとともに、日本不整脈心電学会学術大会や植込みデバイス関連冬季大会などにおいて発表され、抜去術の普及と知識・技術の向上に寄与してきました。一方で、心臓植込みデバイスの進歩も著しく、2010年の保険償還以降、2016年には皮下植込み型除細動器(S-ICD)、2017年にはリードレスペースメーカー、アンカー付き左室リード、スタイレットルーメンを持たないリードを用いた刺激伝導系ペーシングなどが導入されました。さらに本年(2025年)には、血管外に留置する除細動器(EV-ICD)も導入され、デバイスの多様化とともにリード抜去術も一層の複雑化を余儀なくされています。

 このような背景を踏まえ、従来のJ-LEXを一旦終了し、新たに「J-LEX II」を開始する運びとなりました。J-LEX IIでは、“経静脈”リード抜去に加えて、S-ICDやEV-ICDの抜去も対象とし、またリードの分類についても、これまでの「心房」「心室」 「ICD」「左室」の4分類から、さらに詳細に分類いたしました。

 本レジストリの運営にあたっては、現場の先生方にご負担をおかけすることになりますが、データの集積により、リード抜去術の安全性および成功率がさらに向上し、より良い医療の提供につながるものと確信しております。何卒、ご理解とご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 2025年7月

一般社団法人 日本不整脈心電学会
理事長 夛田 浩

同 J-LEX Ⅱ レジストリワーキンググループ
合屋 雅彦、草野 研吾