本レジストリーは、着用型自動除細動器(WCD)の本邦における使用実情とその背景を調査することが目的です。植込み型除細動器(ICD)に代表される植込み型除細動デバイスは、致死的不整脈による心臓突然死を予防するための極めて有効な治療手段として広く普及しています。しかし、除細動デバイスの植込みで予後が改善される症例群が明らかにされている一方で、その利点が明らかではないいわゆるグレーゾーン症例や、除細動デバイスの適応があっても身体状況などの要因で直ちに植込み手術を行えない症例では除細動デバイスを使用できない場合があります。急性疾患で左心機能が低下した症例や感染などの理由で除細動デバイスを摘出しなければならない症例などが代表ですが、これまでその様な症例には安全な観察方法が確立されていませんでした。WCDは着用型ベストに感知用電極と除細動パッドを装備したシステムで、ベルトなどに装着したコントローラに接続することで、ICDに匹敵する精度の診断と治療効果が示されているデバイスです。その有用性は、主に米国やドイツの臨床データで示されており、本邦でも保険償還された治療ですが、実際にどの様な症例に利用され、どの様な効果が得られるのか本邦のデータが絶対的に不足しています。WCDの使用期間も原則3ヵ月とされていますが、それが適切であるか否かを検討するデータもありません。また、着脱するという手続きを伴うシステムであるがゆえに装置管理のためのサポートチームを必要とし、各医療機関にICDとは異なった負担がかかる可能性もあります。本レジストリーでは、WCDを使用された症例のデータ登録を通して、WCD治療の有効性や安全性とともに、運用上の問題点や今後の課題を明らかにしたいと考えています。

 日本不整脈心電学会植込みデバイス委員会では、このレジストリーを通してWCD治療の現状を把握してその情報を発信するとともに、将来的な適応や推奨基準の基礎となるべきデータを蓄積したいと考えています。

 すべて皆様のデータ入力がもとになりますので、なにとぞご協力をお願いいたします。

令和2年10月吉日

一般社団法人 日本不整脈心電学会 理事長
清水  渉

同 植込み型デバイス委員会 委員長
安部 治彦

同 デバイス委員会教育認定制度部会長
高木 雅彦

同 WCDワーキンググループ委員長・J-WCDR研究代表
庭野 慎一