会長挨拶
第11回植込みデバイス関連冬季大会開催に向けて
この度、第11回植込みデバイス関連冬季大会の大会長を仰せつかった北里大学の庭野慎一でございます。多数の皆様の温かいご高配により望外な役目をいただいたことを大変ありがたく思います。
1958年にスウェーデンのRune Elmqvistらによって初めての体内植込み式ペースメーカが試作されてからすでに半世紀以上、現行のリチウム電池を使用した実用的なデバイスが商品化されてからもすでに40年以上の時が経過しています。その間のデバイスの進歩は実に目覚ましいものです。徐脈の治療、頻拍の治療に留まらず、突然死の予防、心不全の治療、診断に特化したデバイスなどが登場しました。さらに、電池とコンピュータを内蔵する本体と血管内に留置するリードと言う組み合わせ、すなわちその黎明期からの古典的なドグマの壁を打ち破り、本体を直接心臓に留置するリードレスシステム、皮下にのみ留置するデバイス、可逆的に着用するデバイス、など、全く新しいパラダイムが登場し始めています。その管理においても、遠隔モニタリングなどのきめ細かいデバイス管理が行える様になるとともに、その担い手は医師と患者自身に留まらず、様々な立場のメディカルスタッフに及んでおり、もはやこれらに対応する専門的なチーム医療なくしては治療自体が成立しないものとなってきました。さらに、長期管理におけるMRI撮像への対応、リード抜去技術の進歩などを含めれば、植込みデバイスという治療手段を中心とした、一つの治療管理体系の分野が構築されつつあると言っても過言ではないでしょう。
しかし、あくまで植込みデバイスは患者の治療のために存在するものです。デバイスの技術革新に眼を奪われて、患者自身が如何に利益を得るのかという本質的な命題が置き去りにされてはなりません。植込みデバイス関連冬季大会は10回と言う節目を超えて、新たなステージに入りました。この第11回大会では、ますます発達しつつあるデバイスを駆使して人間自身が如何に生きるか、という原点に立ち返るため「デバイスと生きる輝く人生-A better life living with devices-」をテーマとしました。デバイスと言う無機質な医療機器が生命である人間に溶け込み、その生命をさらに輝かせる、その様な課題を様々な側面から討論できる大会になればと願っております。是非、多数の皆様のご参加を期待いたします。なにとぞよろしくお願いいたします。
第11回植込みデバイス関連冬季大会
会長 庭野慎一
(北里大学医学部循環器内科学)