会頭挨拶

日本不整脈学会会頭

 植込み型除細動器が本邦に導入されて17年が経過し、致死的不整脈に対する最も有効な治療手段として広く臨床応用されています。本邦の除細動デバイス植込みの実態、特徴は、不整脈学会植込み型デバイス登録・評価委員会が中心となって実施してきました登録システム Japan Cardiac Device Treatment Registry (JCDTR) によって明らかにされ、学会・論文等にて公表してきました。

 この後ろ向き研究の観察データベースでは、冠動脈疾患に対する一次予防としてのデバイス植込み数は海外に比較して少なく、また、適切作動はやや多く、予後は海外の報告と同等でした。この原因として、日本ではより重篤な患者に一次予防目的でデバイスが植込まれている可能性が考えられます。デバイス治療の適応は、冠動脈疾患の治療の変遷や進歩、VT/VFに対する治療、とくに薬物療法やカテーテルアブレーションの進歩、保険制度、などにより、時代とともに変化しています。しかしながら、本邦における冠動脈疾患に対するデバイス治療の意義、とくに一次予防の意義は未だ確立されていません。

 本研究により、冠動脈疾患に対するデバイス治療の成績が、心室性不整脈に対するアブレーション治療、あるいは冠動脈疾患に対するインターベンション治療とともに把握され、今後の冠動脈疾患患者に対するデバイス治療の方針決定やガイドライン作成に貴重な基礎データを提供するものと期待されます。

 是非とも本研究の意義をご理解いただき、ご参加いただきますようお願いいたします。

日本不整脈学会会頭 奥村 謙