ご挨拶
心筋焼灼道 ―ここからどこにいくのか?
SHINKINSHOSHAKU-DO ―Where to go from here?
カテーテルアブレーション関連大会2017
会長 鵜野 起久也
(札幌ハートセンター / ハートリズムセンター)
本邦でカテーテルアブレーションが始まってから早いものでほぼ30年、私はその黎明期からアブレーション、不整脈に没頭して今日に至りました。ふと振り返った時、私の医師として歩んで来た人生の殆どを不整脈と過ごすことができたことは自分の宝であると感じると同時に、自分を支え共に歩いてきた仲間への深い感謝の思いがこみ上げて参ります。今できることは、カテーテルアブレーションの30年の歩みとその蓄積された治療コンセプト・技術、情熱を、微力ながらアブレーションと歩む皆さんに伝えていくことと思います。本邦におけるカテーテルアブレーションは、他の国とは幾分異なる状況の中で始まり現在に至っています。本邦における臨床電気生理学は、古くから極めて優秀な先人・先輩たちによって情熱をもって議論され深化し、そのコンセプト、解釈、不整脈の機序が詳細に解明されてきました。そうした中、カテーテルアブレーションが、臨床電気生理学に精通した不整脈医によって産声を上げました。カテーテルアブレーションという魅力的な治療が、常に不整脈の機序を念頭に置いた極めて学究的な背景をもった先人・先輩たちにより牽引されてきたことは、本邦のカテーテルアブレーションが理想的な環境で育って来たことを意味し、より良質な治療へと発展いたしました。そうした意味において、我々日本人は極めて幸運であったと思います。
1989年に第1回カテーテルアブレーション研究会が開催され、1992年の第4回カテーテルアブレーション研究会において、私は初めて口演を行う機会を得ました。会場であった東京女子医科大学への道は参加する医師の熱気に溢れ、会場内の異様な緊張感、質問者の渦巻く熱情は今でも忘れることはできません。2005年の第17回カテーテルアブレーション研究会はつくば国際会議場で開催され、ライブデモンストレーションが始まりました。これは臨床電気生理学と実践不整脈学の融合が学会レベルに昇華したことを意味するものであり、以後も本邦のカテーテルアブレーションは、臨床電気生理学を基盤として出生し、実践不整脈学として成長していきました。
本邦におけるカテーテルアブレーションの栄えある誇り高き歴史、それを支えた先人たちの矜持、そして思いや気概、そして私自身、自分の医師人生をかけたカテーテルアブレーションには、患者への思いや生命への尊厳が根本にあります。カテーテルアブレーションは、単なる道具や技術ではなく、医師の、不整脈治療にかける真摯な思いや尊厳が大きく関わる治療であり、それは、“心筋焼灼道”と呼ぶべき、尊い精神性を帯びたものと考えます。
来る2017年7月6日~8日に開催されるカテーテルアブレーション関連大会2017 (CATHETER ABLATION SAPPORO 2017)では、そうした思いから、カテーテルアブレーションに関わる全ての参加者を対象に、以下のようなスケジュールで熱いディスカッションを重ねて参りたく思います。7月6日には、従来のようにライブデモンストレーションにて、多くの症例をhigh dense discussionしていきます。既に世に出ているバルーンテクノロジーのみならず、今後の展開についてもディスカッションすることを考えております。従来予定されていた公開研究会は、予定枠を拡大して7月7日~8日の2日に渡り開催致します(一般演題は7日のみ)。一般演題者には、500にとどく演題を登録いただきました。その他にも、シンポジウム・パネルディスカッション・コントロバーシ、第9回植込みデバイス関連冬季大会(栗田隆志会長)と連携した合同セッションなどを行います。
本大会では、先人たちの築いてきた“心筋焼灼道”を継承し、より深化させ、未来の“心筋焼灼道”を構築して参りたく、北の大地で謙虚に真摯に、そして大胆に、言葉と思いを尽くしたいと思っております。本大会が、カテーテルアブレーション治療に関わる全ての皆さんにとって、未来への道標となりますことを願っております。
多くの皆様のご参加を札幌の地で心よりお待ち申し上げております。