心臓が原因で起こる脳梗塞を予防するにはどのような方法があるの?
心臓が原因で起こる脳梗塞(心原性脳梗塞)の予防にはいくつかの方法があります。それぞれについて説明します。
薬による予防
心原性脳梗塞を予防するためには、心臓の中の淀んでいる血液をサラサラにして血の塊(血栓)ができないようにする必要があります。血液をサラサラにする薬を抗凝固薬と呼びます。いままでワルファリンという薬が代表的でしたが、食事制限(納豆や青汁などのビタミンKを多く含む食品)や、効果を確認するための頻回な採血など、患者さんの負担が大きいといわれていました。

採血を頻回に行う、食事制限があるなど、患者さんに負担がかかっていた。
2011年からワルファリンのほかにダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンの4種類の抗凝固薬(Direct Oral Anticoagulant: DOAC)が順次使えるようになり、患者さんの選択肢が広がりました。これらは食事制限がなく、効果を確認するための採血も必要ないため、患者さんの負担はワルファリンに比べて少なくなりました。また、副作用である出血性合併症の発症率が、ワルファリンよりも低いとの報告もあります。しかし、メリットばかりではありません。まだ薬価が高く、終生飲み続ける必要があることを考えると、経済的な面での負担は大きいといえます。
カテーテルアブレーション術による予防
そこで注目されているのが、カテーテルアブレーション術という方法です。心房細動の原因とされている肺静脈という部位の周囲をカテーテルで焼灼(高周波で焼く)、あるいは冷凍凝固することで不整脈の原因を取り除き、心房細動が起こらないようにする根治療法です。近年では、機器の進化により、発作性心房細動に対するカテーテルアブレーション術の成功率は80%以上になりました。
理論的には、カテーテルアブレーション術で心房細動の原因を取り除けば、抗凝固薬を中止しても脳梗塞を予防できると考えられますが、長期的にみると再発する症例も少なくありません。さらに、心房細動の持続期間が長い(持続性心房細動)患者さん、高齢の患者さんなどは再発するリスクが高いといわれています。一般的には、心房細動に伴う脳梗塞の発症リスクの高い患者さんでは、カテーテルアブレーション術後も抗凝固薬を継続するべきと考えられています。
経皮的左心耳閉鎖術による予防
もう一つ注目されている治療法があります。心房の中でも、特に血液が淀んで血栓ができやすい左心耳という部位を、カテーテル状の医療機器で(Watchmanという機器が汎用されています)物理的にふさいでしまう方法です。これを経皮的左心耳閉鎖術と呼びます。この治療を行うと、抗凝固薬を服用する必要はなくなりますが、抗血小板薬の服用は続ける必要があります。抗凝固薬を服用すると大出血を起こしてしまうような、出血リスクの高い方が対象とされています。