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QT延長症候群とは?

 心臓には発電能力があり、発生した電気が心臓を収縮させて、血液を全身に送り出しています。心臓の筋肉は電気が伝わってくると収縮し、その後拡張しますが、正常な状態ではそれを繰り返しています。心室が収縮してから拡張するまでの時間を、QT時間といい、通常0.36〜0.44秒程度です。何かしらの理由でQT時間が長くなると不整脈が起こりやすくなり、場合によっては突然死に至ります。これをQT延長症候群(LQTS)といいます。
 LQTSには、学童期から思春期にかけての発症が多い先天性LQTSと、薬の使用や徐脈に伴って発症する二次性(後天性)LQTSがあり、いずれも遺伝子異常がかかわっていることが報告されています。

先天性QT延長症候群とは?

 先天性LQTSの多くは遺伝性で、安静時においてもQT時間の延長が見られるといわれています。発症率は2,000人に1人程度と推定されており、女性にやや多い傾向があるといわれています。

原因

 遺伝子の変異によって発症します。原因となる遺伝子が心臓を流れる電気に影響を及ぼして、QT間隔を延長させますが、少し専門的な話になりますので、ここでは省略いたします。

分類

 原因となる遺伝子により、いくつかの型に分類されます。常染色体顕性遺伝のRomano-ward症候群(LQT1型~LQT15型)、常染色体潜性遺伝のJarvell and Lange-Nielsen症候群(JLN1型~JLN2型)などがありますが、約90%の患者さんはKCNQ1(LQT1型)、KCNH2(LQT2型)、SCN5A(LQT3型)のいずれかに変異があると報告されています。

症状

 QT時間の延長により、多形性心室頻拍トルサード・ド・ポワント(torsades de pointes:TdP)〕が起こると、失神やけいれんなどの症状が現れます。時に、突然死に至る恐れもあります。LQT1型、LQT2型、LQT3型で、発作の起こりやすい状況が異なります。

■LQT1型

 驚いたり怒ったりするなどの興奮した時、ランニングなどの運動時にQT時間が延長し、発作が起こりやすくなります。特に、水泳中の発作が特徴的といわれています。

■LQT2型

 時計のアラーム、電話の着信音などの突然の音刺激によりQT時間が延長し、発作が起こりやすくなります。女性では、分娩後に発作が現れる場合もあります。

■LQT3型

 安静時、睡眠中に発作が多くみられるとの報告があります。

診断方法

 主に、心電図所見(QT時間の延長、TdPの有無、T波の形態など)、臨床症状(失神の既往、発作時の状況など)、家族歴(QT延長症候群の既往、突然死の有無)、遺伝子診断(変異の有無)にて診断します。そのほか、運動負荷試験や薬物(カテコラミン)負荷試験などを行う場合もあります。また、LQT3型の原因遺伝子(SCN5A)はBrugada症候群や進行性伝導障害の原因にもなりますので、それらの家族歴も確認します。

治療方法

 まず、遺伝子型やQT時間に基づいてリスク評価を行います。近年では、遺伝子型のみならず、原因遺伝子の変異部位や変異タイプにより、治療方法や予後が異なると報告されています。これらを総合的に判断して、β遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、カルシウム拮抗薬などを使用しますが、突然死のリスクが高い場合には植込み型除細動器植込み術を検討します。

■急性期治療

 TdPを停止させるには、硫酸マグネシウム、β遮断薬、抗不整脈薬、カルシウム拮抗薬が有効な場合があります。低カリウム血症はTdPを誘発させる恐れがありますので、カリウム値を適正に保つように調整します。徐脈の場合は、一時的ペーシングを行って心拍数を増加させます。TdPが心室頻拍に移行すると非常に危険なため、ただちに電気的除細動を行う必要があります。

■予防的治療

①生活指導
 高リスクの場合、運動中に発作を起こしたことのある場合は、基本的に激しい運動は禁止です。特に、LQT1型では激しい運動や水泳、長時間にわたる運動は避けてください。また、LQT2型では突然の音刺激により発作が誘発されますので、そのような状況を避けるように注意しましょう。
 また、ほかの疾患を併発している場合は、QT延長作用のある薬(エリスロマイシンなど)の投与を避けるため、LQTSと診断されていることを医師に必ず伝えてください。

②薬物療法
 いくつかの薬があり、単体で使用したり併用したりします。

・β遮断薬
主にLQT1型やLQT2型で使用され、発作を抑制するといわれています。特にLQT1型では有効性が高いとされています。

・ナトリウムチャネル遮断薬
主にLQT3型で使用され、QT間隔を短縮させる、発作を予防するなどの効果があるといわれています。

・カルシウム拮抗薬
β遮断薬のみでは発作を抑制できない場合に、併用されることがあります。

・カリウム薬
血清カリウム値を≧4.0mEq/Lに保ち、発作を抑制するために使用することがあります。

③ペースメーカ植込み術
 β遮断薬の投与で徐脈となり、発作が現れる場合にはペースメーカ植込み術を検討します。

④植込み型除細動器(ICD) 植込み術
 TdPによる心停止の既往がある、薬物療法で効果が見られない場合には、植込み型除細動器(ICD)の植込みを検討します。

二次性(後天性)QT延長症候群とは?

 二次性(後天性)LQTSでは遺伝的要因に、薬や低カリウム血症、高度な徐脈などの二次的要因が加わってQT時間が延長し、不整脈が現れます。中高年層、女性に多く見られるとの報告があります。

原因

 薬によるQT時間延長が最も多く、薬剤性LQTSと呼ばれます。抗不整脈薬、向精神薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗アレルギー薬、消化器疾患薬などの様々な薬が原因との報告があります。また、電解質異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症、低カルシウム血症)、徐脈、脳卒中、甲状腺機能低下症、神経性食欲不振症なども原因であるとの報告もあります。高齢者は代謝機能や心機能が低下していることから、女性は性ホルモンの影響からQT時間が延長しやすいといわれています。

症状

 先天性QT延長症候群の項目を参照ください。

診断方法

 問診(既往歴、家族歴)のほか、安静時12誘導心電図検査(標準12誘導心電図検査)を行います。薬が原因と思われる場合には、使用している時と使用していない時のQT時間を比較します。また、QT時間延長が認められたときの、電解質異常の有無を確認します。場合によっては、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、心臓MRI検査やホルター心電図検査、遺伝子検査を行います。

治療方法

 QT延長の原因が薬の場合は使用中止、電解質異常の場合は電解質補正を行います。徐脈の場合は硫酸アトロピンやイソプロテレノールを使用したり、心房および心室ペーシングを行ったりして心拍を上げます。ほかの疾患が原因の場合は、それらを治療します。

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