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心臓突然死について

産業医科大学第二内科学 萩ノ沢 泰司

1.心臓突然死とは?

 突然死とは健康そうに見えた人が予期せず突然帰らぬ人になる事であり、医学的には「症状が出現してから24時間以内の予期しない内因死」と定義されています。我が国では年間約10万人の突然死があり、このうち約6万人が心臓の異常が原因となる心臓突然死です。実に1日約160人もの人が心臓突然死している計算になります。
 心臓突然死の大半は心室細動という不整脈によっておこります。心室は心臓から血液を送り出す役割を果たしていますが、心室細動ではこの心室がけいれんして細かくふるえている状態となり血液を送り出すことができなくなります(図)。脳への血流がとだえると数秒で意識を失い、適切な治療を受けることなくその状態が続けば数分で死に至ります。多くの心室細動がおきた方は病院に到着する前に亡くなってしまいます。

図

2.心臓突然死の原因は?

なぜこの様に突然心臓が「けいれん」してしまうのでしょうか。心室細動をおこす原因となる病気は、実に様々で心臓の筋肉に栄養をおくる冠動脈がつまってしまう「心筋梗塞」はよく知られた病気ですが、心筋梗塞を発症して数日以内におよそ1割の方に心室細動を生じるとされています。また、心筋梗塞の急性期を乗り越えても慢性期に心臓の収縮が著しく低下してしまった場合や、冠動脈に問題がなくても心臓の筋肉自体が弱って薄くなる「拡張型心筋症」、逆に心筋が厚くなる「肥大型心筋症」も心室細動をおこしやすいことで知られています。

さらに、このように目に見えて心臓の筋肉や血管に問題がある場合だけではなく、見かけ上何ら心臓の構造や機能に異常がなくても、心臓の規則的な収縮に必要なナトリウムやカリウムなどのイオンの流れに異常がある場合(QT延長症候群Brugada症候群など)にも心室細動が生じる危険性があります。この中には先天性の要因によって生じるものもあり、血のつながりのある家族内でまとまって認められる場合もあります。

3.心室細動を停止するには?

 心室細動を正常な脈に戻すには心臓に電気ショックを通電して強制的に心臓の異常なリズムをリセットする「電気的除細動」をできるだけ早く行う以外にありません。除細動が1分遅れるごとに7~10%ずつ生存率が低下していきます。特に、脳は血流障害にはきわめて弱く、血流がとだえて数分たつと脳細胞が死んでしまいますので、電気的除細動までのあいだ心臓マッサージや人工呼吸などの心肺蘇生術を行って脳細胞のダメージを最小限に抑える必要があります。

 本邦では、救急車を呼んでから現場に到着するまで平均6分間程度かかりますが、多くの学校や空港などの公共施設には自動式体外式除細動器(AED)が設置される様になりました。救急隊到着前にAEDによりいち早く除細動することが可能となり、救命率の向上に寄与しています。いざというときのために日頃から心肺蘇生術の習得やAEDの設置場所を確認しておくと良いでしょう。

4.心臓突然死を予防するには

 健康的な生活を心掛けることで心臓突然死の可能性を減らすことができます。具体的には、定期的な運動や健康的な食生活を心掛けること、適正な体重を維持すること、禁煙や過度の飲酒を避けることが挙げられます。また、高血圧や高コレステロール血症、糖尿病など心臓病を引き起こす病気のチェックや治療も重要です。
 将来の突然死を完全に予知することはできませんが、心電図や心エコー、電気生理学的検査や運動負荷検査、遺伝子検査など様々な検査により心臓突然死のリスク評価が行われています。

また、注意すべき症状として一時的に気を失う失神があります。失神の大半は命に関わるものではありませんが、心臓が原因である失神は突然死のまえぶれの場合もあり、心臓が原因と疑われる場合には詳しい検査が必要です。

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