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心臓の病気について – 不整脈 – 心室頻拍

心室頻拍

福岡大学病院循環器内科 小川 正浩

1.心室頻拍とは

 正常な心臓のリズム(心拍数が1分間に60~100回程度)とは異なり、心室(心臓の下の部屋)から、心室期外収縮が、高頻度に出現する(心拍数が1分間に120回以上の頻度で心室期外収縮が3連発以上出現する場合)ものを心室頻拍といいます。睡眠不足、肉体的、精神的ストレスやカフェインなどの刺激の強い食事の摂取等が誘引となることがありますが、特に誘引なくおこることもあります。狭心症、心筋梗塞、心筋症、弁膜症など元々の心臓に病気(基礎心疾患といいます)がある方、特に心臓のポンプ機能が低下している方に心室頻拍は発生しやすく、ときに心不全の悪化や突然死の原因となることがあり注意が必要です。

 一方、元々の心臓の病気がなく、心臓のポンプ機能や形態に特別な問題がない正常な心臓、健康な人にも発生することがあります。頻拍中の心拍数が速いほどポンプ失調や血圧低下を引き起こすため危険度が高くなります。
 頻拍持続時間が30秒以上続くものを持続性、30秒より短いものを非持続性と呼びます。頻拍中の心電図波形が単一なものを単形性心室頻拍、波形が一つ一つ違い崩れたものを多形性心室頻拍といい、特に多形性心室頻拍は最も危険な致死性不整脈で心室細動と同じく心肺蘇生など早急な処置を必要とします。

2.心室頻拍の症状

 自覚症状は、胸が急にドキドキする、息切れがする、めまい、ふらつき、意識消失発作などがあります。発作頻度や持続時間が短い、また頻拍の心拍数が遅いときなどは自覚症状が軽微なことがありますが、多くは血圧低下症状(めまい、ふらつき、意識消失)を伴います。

3.心室頻拍の診断

●12誘導心電図

安静仰臥位での心臓の電気活動を捉えるものです。検診で用いられることも多く汎用されている検査法です。心臓にある元々ある病気や異常の同定や頻拍発生部位診断や特徴を評価するために有用です。

●イベントモニター

症状自覚時に手や体に当てることで心電図を記録できる簡易心電図モニターで、特に発生頻度の少ない不整脈の評価に有用です。

●心臓電気生理学的検査

足の付け根、首などの静脈から、電極のついたカテーテルを血管を通して、心臓に挿入し、電気刺激することで頻脈発作の誘発・停止させることで原因、薬の効き具合や治療方針の決定に役立ちます。

●ホルター心電図

心室頻拍は、心電図診断によりなされますが、数秒間の記録では必ずしも捉えられないことがあります。通常24時間連続で記録し、心室頻拍の発作頻度、持続時間や自覚症状との関連、また心室頻拍の発症の仕方などを検査します。

4.心室頻拍の治療

薬物治療

 β遮断薬などの抗不整脈薬の内服、静脈注射薬を用いて治療します。自覚症状、年齢、期外収縮発生部位、心臓のポンプ機能や形態、基礎心疾患など様々な要素を考えて薬を選択し、単剤およびいくつかの薬を併用して治療します。

非薬物治療
●カテーテルアブレーション

●カテーテルアブレーション
足の付け根の静脈や動脈から血管を通してカテーテルを心臓に挿入し、心臓の中の電位の解析や立体構築で可視化できるマッピングシステムを用いて、不整脈の回路や発生源を同定しカテーテルの先端から心筋焼灼するもので根治が期待できる治療法です。

●植込み型除細動器

主に鎖骨下静脈から静脈血管を通して、心房と心室にそれぞれリードを挿入し、心室頻拍発生時に電気刺激または直流除細動により頻脈を停止させる体内に植込む機器で、致死性不整脈による突然死の予防に有効です。

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