心臓の病気について – QT延長症候群
QT延長症候群
国立循環器病医療センター 不整脈科 野田 崇
1. QT延長症候群とは
QT延長症候群は心筋細胞の電気的な回復が延長することにより起こる病気で、心電図上のQT時間が延長することからこの名前がついています。
主に2つの種類に分けられ、学童期などの若年から指摘される先天性QT延長症候群と比較的年齢が高くなり、薬剤使用や徐脈に伴い発症する後天性QT延長症候群があります。
このどちらにおいても遺伝子異常が関わっていることが報告されています。発作がない場合には心機能などは正常ですが、失神の原因となったり、場合によっては突然死に結びつくような致死性不整脈が起こる場合もあります。その実数は不明ですが、先天性QT延長症候群は2,500人に1人程度の患者さんが存在すると推定されています。
2. QT延長症候群の特徴
心電図は四肢および胸部に付けた電極により記録されますが、その波形にはP~T(U)までの名称が付けられており、心臓の電気的活動を示しています(図1)。このうちの心筋細胞が収縮後、収縮前の状態に戻る時間(再分極時間)が、心筋細胞イオンチャネルの障害によって延長することがこの病気の原因と考えられています。このため、心室期外収縮やトルサードポアン(Torsade de Pointes: TdP)と呼ばれる多形性心室頻拍(図2)から心室細動となり、失神や突然死を引き起こすことがあります。
また先天性QT延長症候群では遺伝的素因を有する場合があります。6割の患者に遺伝子異常が発見され、両親、兄弟を含めた血縁者の検査も考慮されます。
一方、後天性QT延長症候群では、薬剤により症状が顕在化する場合があります。QT延長に作用する主な薬剤や病態を表1に示します。通常、これらの薬剤の使用は問題ありませんが、QT延長症候群の患者では使用すべきではありません。
3. QT延長症候群の治療
遺伝子型やQT時間に基づいて、リスク評価を行い、加療が決定されます。近年では遺伝子型のみではなく各原因遺伝子の変異部位によって重症度が異なることが報告されています。
これらを総合的に判断して、β遮断薬、ナトリウムチャンネル遮断薬、カルシウム拮抗薬などの薬剤による治療や突然死のリスクが高いと判断される場合には植込み型除細動器の適応となることがあります。