3.不整脈とはどのような病気なの?
心臓には電気を発生する発電能力があります。電気は、イオン(Na、K、Caなど)が心臓の細胞を出たり入ったりすることによって、右心房の上方にある洞結節という発電所から規則正しく発生します。
心臓の壁の筋肉は、電気が流れると収縮します。発生した電気は、まず心房全体に広がるため、最初に心房が収縮することになります。その後、電気は心臓の中心あたりにある房室結節を通って、心房から心室に伝わります。そのため、心室は心房より0.2秒くらい遅れて収縮します。心房は全身を巡ってきた血液を受け入れ収縮して心室に送り込み、心室は収縮して全身に血液を送り出します。このように、心房から心室の順に収縮することで、ポンプのように効率よく血液を送り出します。
洞結節からは60~100回/分くらいの頻度で電気が発生しますが、その回数分だけ心臓は収縮し(心拍数)、動脈で脈を触れる(脈拍数)ことになります。運動したり緊張したりすると心拍数や脈拍数が増えるのは、洞結節の電気の発生頻度が増加するためです。一方、睡眠中に心拍数や脈拍数が減るのは、電気の発生頻度が減少するためです。
洞結節から規則正しく電気が発生して心房から心室まで伝わっている状態を洞調律と呼び、正常な状態です。一方、電気が様々な原因で発生しなかったり、発生しすぎたり、あるいは通常の通り道を出入りできなくなったりして、脈が乱れている状態を不整脈と呼びます。

右心房の上方にある洞結節で発生した電気は、房室結節を通って心室に伝わる。
不整脈の種類……頻脈性不整脈と徐脈性不整脈
不整脈は脈の速さにより、脈の速くなる頻脈性不整脈と脈の遅くなる徐脈性不整脈の、大きく2つに分けられます。
頻脈性不整脈とは、心拍数が100回/分を超える不整脈をいいますが、種類によっては250回/分を超えるものもあります。代表的な症状は、ドキドキする、めまい、失神などで、最悪の場合は死に至る恐れもあります。心筋梗塞や弁膜症など、心臓に疾患があって起こる場合もありますが、心臓に疾患がなく不整脈だけが起こる場合のほうが多い傾向にあります。睡眠不足、強いストレス、過度な飲酒、運動などがきっかけで起こることもあります。
徐脈性不整脈とは、心拍数が60回未満/分になる不整脈をいいます。代表的な症状は、めまい、失神、疲労感などで、最悪の場合は死に至る恐れもあります。
なお、運動時や緊張時には洞結節からの電気信号の頻度が増加し、規則正しい頻脈になりますが、これを洞性頻脈と呼びます。一方、洞結節からの電気信号の頻度が少なくなって、規則正しい徐脈になることを洞性徐脈と呼びます。また、習慣的にスポーツをしている方は洞性徐脈になることもありますが、この場合は治療の必要はほとんどありません。
頻脈性不整脈と徐脈性不整脈
頻脈性不整脈 | 心房細動、心房粗動、発作性上室頻拍(WPW症候群、房室結節リエントリー性頻拍)、心室細動、心室頻拍、(心房性・心室性)期外収縮 |
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徐脈性不整脈 | 洞不全症候群、房室ブロック |
不整脈の種類……比較的良性な不整脈と命にかかわる不整脈
不整脈には、生命に危険を及ぼす重篤なもの、動悸などの症状があって日常生活に差し支えるもの、症状はあるものの身体に影響をおよぼさないもの、症状もなく身体にも影響がないものまで、様々な種類があります。
そのうち、失神を伴うような不整脈は、一時的に極端に血圧が下がる、あるいは心臓が停止するようなことが起こったと推測され、重症と考えられます。失神しなくても、めまいや目の前が真っ暗になる、いわゆる眼前暗黒間が起こった場合にも注意が必要です。

めまいや目の前が真っ暗になった場合にも注意が必要。
比較的良性な不整脈と命にかかわる不整脈を表にまとめました。比較的良性な不整脈とはいっても、心房細動・心房粗動は脳梗塞や心不全を起こす恐れが、心臓に持病があったり心臓の機能が低下していたりする患者さんでは重篤な不整脈に移行する恐れがあります。1拍だけ脈が飛ぶ、1拍だけ胸に突き上げるような動悸を感じるなどの不整脈は、それほど心配する必要はないものの、重症な不整脈が潜む場合もあります。また、命にかかわる不整脈では、一度の発作で死に至る恐れもあります。いずれにしても、「何かおかしいな」と感じたら、医療機関を受診してください。
比較的良性な不整脈と命にかかわる不整脈
比較的良性な不整脈 | 心房頻拍、(心房・心室)期外収縮、心房細動、心房粗動 |
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命にかかわる不整脈 | 心室細動、心室頻拍、洞不全症候群、房室ブロック(アダムス・ストークス症候群)、遺伝性不整脈(QT延長症候群、Brugada症候群、QT短縮症候群、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍) |