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治療について – 総論

総論

日本医科大学循環器内科 宮内 靖史

 “不整脈”には、生命に危険を及ぼす重篤なものから身体に全く悪影響のないもの、動悸などの症状のため日常生活に差し支えるものから全く症状がないものまで様々です。これら様々な不整脈の治療法は、重症度や症状の程度によって決められます。
心臓自体に異常のない患者さんに発生する上室期外収縮や心室期外収縮は命にかかわることはまずありませんので、症状がなければ治療は必要ありません。ストレス・睡眠不足・飲酒などが誘因になっている場合には、日常生活の改善のみで消失することもあります。 命にかかわることのない比較的良性な不整脈(発作性上室頻拍・心房細動・心房粗動・心房頻拍など)に対しては、発作を抑制するために薬を服用していただいたり、カテーテルで不整脈源を焼灼する治療(経皮的カテーテル心筋焼灼術)をうけていただくことがあります。
 不整脈を抑制する薬を抗不整脈薬と呼び、現在日本では30種類近くの抗不整脈薬が使用されています。これらを大きく分けるとナトリウムチャンネル遮断薬(I群薬)、β遮断薬(II群薬)、カリウムチャンネル遮断薬(III群薬)、カルシウム拮抗薬(IV群薬)の4群に分類されます。抗不整脈薬は持続する不整脈を止めたり、不整脈の発生頻度を減らしたり、また不整脈時の心拍数を調整する目的で使われますが、心臓の収縮を弱くしたり、意図しない悪い不整脈を誘発したりすることもあるため、患者さんの心臓の機能や状態、不整脈の種類や重症度、症状に応じて使い分けられます。

 経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)は、不整脈の発生源や不整脈の回路をカテーテルで離断する方法です。心房細動心房粗動発作性上室性頻拍心室頻拍心室期外収縮など、多くの不整脈を治療することができます。成功率は不整脈の種類により60-95%と幅があり、成功するまでに2回以上の手術が必要な場合があります。 心室頻拍や心室細動のような危険な不整脈が発生した患者さんの多くは再度発生した場合に命を落とすことがあるため、不整脈発生時に自動的に電気ショックを与え正常リズムを取り戻す装置である植込み型除細動器による治療が必要となります。また、これまでそのような危険な不整脈がなくても、今後発生する可能性が高い患者さんに対しても植込み型除細動器の治療が行われることがあります。
 脈拍数が極端に遅くめまい・気を失うことがある場合や、今後その可能性が高い患者さんにはペースメーカ治療が行われます。ペースメーカ治療、植込み型除細動器治療、カテーテルアブレーションなどを“非薬物療法”と総称します。これら非薬物療法が必要かどうかは患者さんの症状や不整脈の種類や心臓の状態によって判断され、詳細はガイドラインに定められています。これを参考に患者さんの状態や希望なども勘案して決めていくことになります。

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