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心臓再同期療法とは?

 心臓の電気は、「心臓の構造と役割を教えて!」で解説したように、洞結節で発電されます。この電気は、房室結節という心房と心室の間の電気の連絡路を経由した後、心室全体をほぼ同時に収縮させるために高速道路のような専用の経路〔左脚(さきゃく)・右脚(うきゃく)〕を通って心室全体に広がります。左脚に電気が伝わる速度が遅くなると(左脚ブロック)、心室の真ん中の壁(心室中隔)と左心室の壁の収縮のタイミングがずれて効率よく血液を送り出すことができなくなって、心臓の収縮力が悪くなり、心不全を起こす場合があります。逆に、心不全になると左心室が大きくなって左脚ブロックとなり、心不全がさらに悪化する場合があります。この状態を同期不全と呼びます。同期不全になった心臓に対してペースメーカを植込み、電気刺激を加えることで、収縮のタイミングをそろえる治療方法が心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy:CRT)です。

刺激伝導系と心不全における刺激伝導障害
心不全になると、左心室が大きくなって左脚が圧迫されて伝導が遅れ、さらに心不全が悪化する恐れがある(同期不全)。

CRTに用いられるペースメーカの種類、治療の対象となる患者さん

 心臓再同期療法(CRT)に用いられるペースメーカには、両心室に刺激を加える機能をもっている両心室ペースメーカ(CRT-P)、両心室ペースメーカの機能と除細動機能(ICD機能)を併せもつ両心室ペーシング機能付植込み型除細動器(CRT-D)があります。CRT-Pは様々な大規模試験により有効性が認められ、我が国でも2004年に保険適用されて多くの重症心不全の患者さんに植込まれるようになりました。しかし、心不全の患者さんは致死性不整脈(心室細動など)を合併し、突然死する恐れのあることが明らかとなり、近年ではCRTの適応となる患者さんに対して、CRT-Dが使用されることが増えています。

CRT-PおよびCRT-Dの機能

 大きなビーチボールをイメージしてください。ビーチボールの空気を抜く時には、手で両側からビーチボールを挟んで空気を押し出します。同期不全となった心臓に対し、左心室をビーチボールと考えたときの両手の役割をするのが、右室リードと左室リードです。拡大した左室を両側から挟み込んで両心室をペーシングする(歩調を合わせる)と、左室の中隔と側壁を同時に収縮させることが可能になるため、効率よく収縮が行われてポンプ機能が改善されます。

拡大した左心室とペーシング
左脚の伝導が遅れ心不全になると、左心室が拡大する。拡大した左室を両側から挟み込み、ペーシングして同時に収縮させる。両手でビーチボールの空気を抜くイメージ。

手術方法

 手術方法はペースメーカ植込み術とほぼ同様ですが、リードの本数が異なります。CRTで使用されるペースメーカには3本のリードがあり、右心房、右心室、冠静脈(左心室に冠のようにのっている静脈)にリードを留置して刺激を加えます。 

心臓内に留置されたリードの位置
冠静脈にリードを通し、左心室に刺激を与える。

合併症

 合併症はペースメーカとほぼ同じです。「ペースメーカ植込み術とは?」を参考にしてください。

CRT-PおよびCRT-D植込み術後の日常生活について

 ペースメーカおよびICD植込み術後と同様、CRT-PおよびCRT-D植込み術後も普段と変わらない生活を送ることができます。詳しくは、「ペースメーカ植込み術とは?」を参考にしてください。自動車の運転については、「植込み型除細動器植込み術とは?」をご参考ください。
 CRT-D植込み後にICD機能が作動すると胸に強い衝撃を受けるため、ひとたび経験した患者さんは強い不安を感じるかもしれません。ひとりで不安を抱え込まず、担当医に相談してください。

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