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心房粗動

 心房が興奮して、規則的に240回/分以上拍動する頻脈の状態を心房粗動といいます(正常な心臓の拍動は安静時に60~100回/分)。心房細動と心房粗動は頻脈である点でよく似ていますが、電気興奮が発生している部位や興奮の状態により区別されます。不規則に拍動する心房細動に対し、心房粗動は規則正しく拍動します。
 心房粗動は、心房に負荷がかかるような心臓病(弁膜症や心筋症など)がある場合や、高血圧のために心肥大がある場合などに起こりやすい不整脈です。心房粗動自体は命にかかわるような重症な不整脈ではありませんが、自然には治まりにくく、動悸や息切れ、疲れやすいなどの症状が現れる場合もあるため、適切な治療が必要です。また、重症になると、失神をきたす恐れもあります。

心房粗動
心房が興奮して1分間に240回以上拍動する頻脈の状態。規則正しい拍動が特徴。

症状

 症状が現れる場合と現れない場合があります。症状としては、「ドキドキする」「胸が苦しい」「階段や坂を上るのがきつい」「息が切れやすい」「疲れやすい」などがあげられます。症状が現れない場合は、血圧測定時、定期健診時の心電図検査、他の病気で医療機関を受診した際に、見つかることがあります。

診断方法

 まず、心電図検査を行って診断します。しかし、心房粗動が出たり止まったりする発作性心房粗動の患者さんは発作時でなければ心房粗動を記録することができません。そのような場合は、24時間以上の記録が可能なホルター心電図検査が有効なことがあります。発作の頻度が少ない患者さんでは、発作時の心電図の記録ができる携帯型心電計が有効です。

治療方法

 心房粗動の治療方法には、内服薬や注射薬による薬物療法とカテーテルアブレーション術、電気ショック(カルディオバージョン)があります。
 心房粗動は薬物療法が効きにくい不整脈のため、カテーテルアブレーション術が適しています。典型的な心房粗動では、右心房の下の方(三尖弁から下大静脈の間)、数センチの距離を横断するように焼灼します。約95%程度の治療効果があり、症状の再発は5%程度といわれています。治療は局所麻酔下や眠った状態で行われます。所要時間は平均1時間程度ですが、それ以上かかる場合もあります。

心房粗動のカテーテルアブレーション術
下大静脈からカテーテルを通し、三尖弁と下大静脈の間を線状に焼灼する。

 心房粗動に対して電気ショック(カルディオバージョン)を施行する場合があります。これは胸部の2ヵ所に金属のパドル(電極)または電気を通すパッチを貼って直流通電し、心臓のリズムを正常に戻す治療ですが、根治療法ではありません。電気ショックは痛みを伴うため、鎮静薬で眠った状態で行われます。正常のリズムに戻せない場合や、正常のリズムになっても心房粗動が再発してしまう場合があります。

電気ショック(カルディオバージョン)
胸部2ヵ所に金属のパドルを当てて直流通電し、心臓のリズムを正常に戻す。

血栓塞栓症の予防

 心房粗動では、心房細動ほど高率ではないものの、血栓症が発生する可能性があります。そのため、高血圧や糖尿病などの血栓症のリスクがある場合は、予防のための治療(抗凝固療法)が必要です。また、血栓症のリスクの有無にかかわらず、2日間以上持続している心房粗動を停止させる場合には一定期間の抗凝固療法が必要です。抗凝固療法については、「心臓が原因で起こる脳梗塞を予防するにはどのような方法があるの?」をご参照ください。

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