8.不整脈および不整脈の原因をみつけるにはどのような検査方法があるの?
病気をみつけるには、自分の身体の変調に耳を傾けることが最も重要ですが、不整脈はその種類や状況により、症状が現れたり現れなかったりします。どのように不整脈や不整脈の原因を見つけるのでしょうか?いくつかの方法について説明します。
自分で行える検査方法~検脈とは?
検脈という言葉を聞いたことがありますか? 自分で行える検脈は、最も簡単な不整脈検出方法です。日常的に行うことで不整脈、とりわけ心房細動の早期発見につながります。方法を覚えて日々実践し、「脈が乱れている」「いつもと違う」と思ったら医師に相談するようにしてください。
最近では不整脈を検出できる家庭用の自動血圧計もあります。また、スマートフォンアプリやスマートウォッチでも不整脈を検出できるなど、その有用性が報告されています。検脈のみならず、自分で脈の不調を確認できる方法も増えていますので、上手に活用してみてはいかがでしょうか。

不整脈を検出できる家庭用自動血圧計、スマートフォンアプリやスマートウォッチなども活用できる。
【参考資料】
検脈については下記をご参照ください。
https://www.youtube.com/watch?v=FI_2XAWjomo
心電図を用いた検査方法
不整脈を見つけるのに最良の手段といえる方法が、心電図検査です。心電図検査は古くから用いられている、極めて有意義な検査方法です。会社や学校の健康診断などで行われている安静時心電図検査(標準12誘導心電図)が一般的ですが、そのほかにもさまざまな心電図検査があります。それぞれについて説明します。
■安静時心電図検査(標準12誘導心電図)
安静時心電図検査(標準12誘導心電図)は、最も一般的な検査方法です。ベッドに横たわった状態で身体に電極(胸部6個、左右の手足に4個の計10個)を付けて行われます。心臓は電気の刺激で収縮しますが、心電図はこの電気の流れを波形として記録したもので、その形状から不整脈の有無や種類を診断します。1~2分ほどで終了する簡便で安全な検査で、不整脈以外の心臓の異常を発見したり、心臓病の治療効果を確認したりすることも可能です。
ここで注意しなければいけないのは、安静時心電図検査(標準12誘導心電図)に限らず、心電図検査は不整脈が出現しているときにしか異常をとらえることができないという点です。健康診断で「異常なし」といわれても、「なにかいつもと違うな、おかしいな」と思ったら、再検査を受けるようにしてください。

ベッドに横たわった状態で、胸部と手足に電極を付けて心電図波形を記録する。
■加算平均心電図検査
加算平均心電図検査は、安静時心電図検査(標準12誘導心電図)で重篤な心室不整脈の疑いをもたれたときに、より詳しく心室の状態を検査するために行います。検査時間は20~30分ほどかかります。
■運動負荷心電図検査(トレッドミル検査、エルゴメーター検査、マスター階段昇降検査)
トレッドミル検査、エルゴメーター検査、マスター階段昇降検査では運動により心臓に負荷(負担)をかけ、その際の心電図を記録することで心臓の状態を確認します。不整脈や狭心症の発見に用いられます。

心臓に負荷をかけて心臓の状態を確認。運動中の心電図をとる検査方法。
■ホルター心電図検査
多くの心電図検査は、発作が現れているときにしか不整脈を記録することができません。そのため、不整脈があったとしても見逃されてしまう恐れがあります。ホルター心電図検査は、10秒程度しか記録できない安静時心電図検査(標準12誘導心電図)の欠点を補うために発明された機器で、24時間にわたり記録することができます。なかには、48時間、はたまた2週間以上にわたって記録できる機種もあります。
まず、腰にベルトの付いたレコーダー(記録器)を巻きます。レコーダーにはリードが5本付いており、その先には電極が付いています。リードをのばして、電極部分を胸部に貼り付けます。24時間つけっぱなしのため若干わずらわしさを感じるかもしれませんが、「24時間我慢すれば、不整脈の原因が明らかになる」と発想を転換してみましょう。近年は、防水機能をもった機種もあり入浴が可能になるなど、患者さんの負担は軽減されてきています。また電極と記録装置が小型に一体化されて、パッチのように胸部に貼るタイプもあります。

不規則に出現する不整脈は、安静時心電図検査(標準12誘導心電図)では記録できないが、24時間つけっぱなしのホルター心電図検査では記録できる。
■携帯型心電計(イベントレコーダー)による心電図検査
携帯型心電計は医療用と個人用があります。携帯型心電計は、発作(イベント)が起きた時に自分でスイッチを押すと心電図が記録され、そのデータを医師に確認してもらうことで不整脈が発見できます。個人用は家電量販店でも購入できます。
携帯型心電計は、「発作が起きたときに自分でスイッチを押して記録する」という特性のため、ホルター心電図検査よりも診断精度が高いといわれています。しかしながら、長期にわたって、たとえば睡眠中は自分でスイッチを押せないため、記録はとれません。
■植込み型ループ式心電計による心電図検査
植込み型ループ式心電計はマッチ棒数本程度の非常に小さな器械で、前胸部の皮下に植込みます。機種によって異なりますが、電池寿命は3年程度で、その後取り出します。主に原因不明の失神患者さんや原因不明の脳梗塞患者さんで、失神の原因となる不整脈や心房細動を見つけるために使用されます。心房細動は、持続的に出現している慢性心房細動と、ときどき発作的に出現する発作性心房細動があります。発作性心房細動は、その出現が予測不可能なため、安静時心電図検査(標準12誘導心電図)やホルター心電図検査で捉えることは困難です。一方、植込み型ループ式心電計は長時間継続して心電図を記録することができるため、発作性心房細動の発見に有効です。
画像診断による検査方法
超音波やX線、磁気などを用いて心臓や血管の状態をみる画像診断による検査方法でも、不整脈および不整脈の原因を見つけられる場合があります。
■心臓超音波(エコー)検査
超音波検査は人間の耳では聞きとることのできない高い振動数をもつ音波(超音波)を体表から体内の組織にあてて、はね返ってきた音を画像化することで、体の内部を可視化して身体の異常を見つける検査方法です。心臓、肝臓、腎臓や膵臓などの内臓はもちろん、さまざまな部位を検査するのに使用されます。安静時心電図検査(標準12誘導心電図)で不整脈が見つかったとき、心筋梗塞や狭心症、弁膜症の疑いがもたれたときなどに用いられ、心臓の形状や大きさ、動きなどを調べて原因を探ります。
■経食道心臓超音波(エコー)検査
心臓超音波検査と同様に超音波を用いた画像診断方法で、心臓の形状や状態を検査します。胃カメラのように検査端子を飲み込むことで、食道から超音波をあてます。体表面ではなく、体内から得られる画像になるため、心臓超音波検査より詳細な検査が可能になります。
■心臓CT(Computed Tomography:CT,コンピュータ断層撮影)検査
X線を全方向から照射して身体の断面(いわゆる人体の輪切り)を撮影することで、体内を詳細に観察する検査方法です。得られた断面画像をコンピュータで解析して、立体的な画像に変換することも可能です。心臓の形状や冠動脈の状態などを確認し、病因を探るのに用いられます。特に狭心症や心筋梗塞の発見に有効です。
■心臓MRI(Magnetic Resonance Imaging:MRI,磁気共鳴画像)検査
心臓CT検査と似ていますが、MRIではX線を用いず、磁気によって共鳴を起こして身体の断面を撮影します。心臓の機能を評価するほか、心臓の筋肉の状態を見ることもできるので、心筋症を発見するためにも使われます。CT検査と同様、狭心症や心筋梗塞の発見にも有効です。磁気による検査のため、基本的にペースメーカやICDを植込んでいる患者さんはこの検査を受けることができませんでしたが、最近ではMRI対応可能なペースメーカやICDも増えてきました。
■電気生理学的検査(Electrophysiological study:EPS)
不整脈発生のメカニズムを明らかにする検査です。足の付け根、首などの静脈から先端に電極のついたカテーテルを挿入し、血管の中を通して心臓内に留置し、電気的な刺激を加えて不整脈を誘発したり、停止させたりします。薬の効き具合や治療効果の評価、治療方針を定める際にも有効です。