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7.不整脈は失神を引き起こすことがあるの?

 一時的に脳の血流が低下して、数秒から数分の間に生じる意識消失のことを失神と呼びます。通常は数分以内に意識が回復するため、医療機関を受診するときには意識がはっきりしていることの多いのが特徴です。失神を経験したことのある人の割合は19~39%と高く、若年者と高齢者に多く見られます。

発症の原因

 主な原因として、自律神経調節の障害、脳血管・神経疾患、心臓疾患があげられますが、診断が難しく、詳しい検査を行っても約40%は原因を特定できないとの報告があります。

失神の種類

 失神にはいくつかの種類があります。ここでは、反射性失神(および起立性低血圧)と心原性失神について説明します。

■反射性失神(および起立性低血圧)

 最も発生頻度が高いのは反射性失神(および起立性低血圧)で、12~31%を占めています。比較的若年層に多くみられ、自律神経調節の障害が原因で起こります。心臓疾患の有無にかかわらず、長時間の起立や運動、排尿・排便、飲酒、脱水、疲労がきっかけとなって生じる場合もあります。反射性失神の場合は発作の原因を避ければ生じにくくなりますが、繰り返し生じる場合にはすみやかに医療機関を受診してください。

■心原性失神

 心臓疾患が原因の失神を心原性失神といいます。原因となる心臓疾患として、不整脈、心臓の構造や収縮機能の異常(急性心筋梗塞や狭心症、大動脈弁狭窄症などの心臓弁膜症、心筋の異常により生じる心筋症など)、肺の血栓塞栓、急性大動脈解離、肺高血圧などがあげられます。
 不整脈が原因の失神は大きく2つに分かれます。脈が極端に遅くなったり一時的に心臓が停止したりする徐脈が原因の場合と、脈が非常に速くなる頻脈が原因の場合です。徐脈が原因の場合は、心臓から脳に血液が供給できなくなることで脳虚血性症状が生じ、めまいや失神が起こります。頻脈が原因の場合は、心臓のポンプの機能が十分に働かずに血圧が低下することで、めまいや失神が起こります。

心原性失神は特に注意が必要!
重篤な疾患を合併したり、突然死に至ったりする場合もある。

 心臓の構造や収縮機能の異常による失神は重篤な疾患を合併しやすく、不整脈が原因の失神は突然死に至る場合もあるため、注意しなければなりません。心臓に持病、もしくは不安のある方が失神を起こした場合には、すみやかに医療機関を受診してください。

失神の診断

 失神の診断では、まず失神が生じた状況を明らかにすることが重要です。どのような状況で起きたのかを問診したうえで、安静時心電図検査(標準12誘導心電図)、24時間ホルター心電図、心臓超音波検査またはCT検査などの画像検査を行い、原因となる心臓疾患を突きとめます。
 反射性失神(および起立性低血圧)が疑われる場合にはチルトテストを行います。これは傾いた台の上に横になり、血圧や脈の変化を見るテストです。発作を誘発して診断することもあります。
 心原性失神が疑われる場合には、心臓カテーテル検査を行うこともあります。そのうち、冠動脈造影検査はカテーテルを上腕動脈などから冠動脈(心臓を包み込んでいる血管)まで挿入、造影剤を注入してX線撮影することで、冠動脈の状態を調べる検査です。電気生理学的検査では、足の付け根などの静脈からカテーテルを1~3本ほど挿入し、血管を通して心臓内に留置します。留置したカテーテルを用いて、体内から心電図(心内心電図)を記録したり、電気刺激を与えてどのような不整脈が誘発されるかを確認したりします。
 近年では、植込み型ループ式心電計により、長時間にわたって心電図をモニタする検査も行われています。植込み型ループ式心電計は、胸前面の皮膚の下に植込み、長時間にわたって心電図をモニタする心電計です。とても小さな機器のため、患者さんの負担も小さく、日帰り手術も可能です。原因不明の失神を繰り返す場合や心原性失神の場合に行います。

失神の治療方法

 症状にもよりますが、原因が徐脈の場合にはペースメーカ植込み術、頻脈の場合には抗不整脈薬の内服、カテーテルアブレーション、植込み型除細動器植込み術などが行われます。

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