「心電図から病態を推測する」
どんなに検査法が進歩しても、循環器病診断における検査の第一歩は心電図である。問診、身体診察に次いで最初に行う検査が心電図である。簡便で、非侵襲的であり、再現性が高く、しかも非常に多くの情報が得られる検査である。肥大、虚血、梗塞、炎症、電解質異常、不整脈、そのほか循環器診療に必要な多くの情報を提供してくれる。とくに刻々と病態が変化する虚血性心疾患においてはリアルタイムで情報が得られる心電図は基本の検査法といって過言ではない。しかし、心エコー、心筋シンチ、CT、MRI、冠動脈造影などの画像診断に比べて感度や特異度が劣り、また虚血の局在部位の同定や冠動脈病変部位の推定が難しい。そのために、心電図には限界があるという先入観がもたれ、せっかくの情報が十分活用されていないというのも事実である。 そこで、本セミナーでは循環器診療の第一歩である心電図の奥深さ、有用性を再認識してもらうため、「心電図から病態を推測する」を企画した。「心電図による責任冠動脈病変部位の推定」、「運動負荷心電図の実施法と所見の読み方」についてエクスパートである2人の先生に講演していただく。 急性冠症候群(急性心筋梗塞/不安定狭心症)はさまざまな心電図変化を呈し、しかもその所見はdynamicに変化する。しかし、心電図の誘導と心臓の部位の対応を熟知し、虚血/梗塞にともなう心電図変化を理解していれば、責任冠動脈だけでなくその病変部位まで推定することも不可能ではない。狭心症や陳旧性心筋梗塞における運動負荷試験でも、負荷中の血行動態および心電図の変化を総合的に判断すれば心臓あるいは冠動脈の異常を高いレベルで推定できる。 これらを理解したうえで、心電図や運動負荷試験を行なえば、検査のレベルは飛躍的にアップするはずである。ただ検査を行うだけでは面白くもないし、患者さんのためにもならない。循環器の診療あるいは臨床検査にかかわる方には、是非とも聴講していただきたい。心電図の意義が再認識できるはずである。 演題・演者 1.本には載っていない急性心筋梗塞の心電図の見方・考え方 小菅雅美(横浜市立大学附属市民総合医療センター循環器内科) 2.運動負荷試験の基礎と実際:心電図の読み方から心肺運動負荷試験まで 上嶋健治(京都大学大学院医学研究科EBM研究センター) |