教育講座2 「理屈を知らずに心電図を読んでいませんか?」

「抗不整脈薬と心電図 - 抗不整脈薬の功罪とPit-falls -」
北里大学医学部循環器内科学庭野 慎一

1980年代まで抗不整脈薬は頻脈性不整脈の唯一の治療選択肢であったが、その後に登場したカテーテルアブレーションや植え込みデバイス、すなわち不整脈非薬物療法の飛躍的発達により、30年ほどのわずかな期間にその治療選択肢は多様化し、抗不整脈薬の臨床的役割はかなり限定かつ特殊化した。しかし、現在においても抗不整脈薬を必要とする場面は確かに存在し、かつそれが迅速な判断を要する場面、すなわち頻拍の停止や頻発状態の解除など重要な場面である場合が少なくない。不整脈や、不整脈のリスクがある状態を適切に診断し、速やかに薬物治療を行う必要がある。しかし、興奮性細胞の活動電位を担うイオンチャネルの特性を修飾するという抗不整脈薬の作用は、特定の病態に置かれた心筋にとって両刃の剣である。「抗」不整脈であるはずの薬物が「催」不整脈的に作用したり、心ポンプ機能を阻害して心不全を悪化させたりする場合もある。しかし、これらの作用は心電図に所見を現わす場合が多く、注意深い心電図モニタリングでリスクを察知できる場合もある。本講演では、現代の不整脈治療における抗不整脈薬の位置づけと副作用について概説し、その臨床的功罪を明らかにするとともに、心電図で察知できる異常について説明する。