シンポジウムⅠ 公募
持続性心房細動へのアブレーションは有益か
座長 中川 博University of Oklahoma Health Sciences Center, USA
  山根 禎一 東京慈恵会医科大学 循環器内科
  座長のことば
   1990年代後半に、大部分の発作性心房細動(AF)患者において肺静脈内に進展している心房筋(pulmonary vein myocardium)よりの異常興奮(pulmonary vein firing)によりAFが誘発されることが明らかにされた。 Haissaguerre らは、先端リング状カテーテルを用いて左心房―肺静脈間の電気的伝導を途絶させる肺静脈隔離術(pulmonary vein isolation)を開発した。その後、肺静脈入口部の前庭部を含めて焼灼する前庭部隔離術(pulmonary vein antrum isolation)が導入され、発作性心房細動患者にて60%−90%(複数回のアブレーション施行例を含む)の慢性期成功率(AF再発抑制)が報告されるようになった。その後いくつかの異なったアプローチでのアブレーションが行われるようになったが、施設によっては完全な肺静脈隔離術を行なわなくても同様のアブレーション慢性期成功率が得られるとの報告がなされた。持続性AFに対しては、左心房への線状焼灼にて慢性期成功率が増加すると報告されたが、この場合も線状焼灼により完全な伝導ブロック作成が必須であるとする施設と伝導ブロックは必ずしも必要ではないとする施設とに意見が分かれた。Nademaneeらは肺静脈隔離は行なわず心房内のcomplex fractionated atrial electrogram(CFAE) を標的として心筋焼灼を行ない、他の方法と同等の慢性期成功率を報告した。この様に、幾つかの異なったアプローチによるアブレーションにより同様の成功率が得られていると言う混乱した状況が未だに続いている。言い換えれば、AFに対するアブレーション療法に関して不明な点が多く残されているといわざるを得ない。
   シンポジウムⅠ「持続性心房細動へのアブレーションは有益か」においては、これまでの反省点、最近の現状と今後の展望に関して熱く議論を戦わせて頂きたい。
シンポジウムⅡ 公募/一部指定
遺伝性不整脈の臨床 from bench to bedside
座長 堀江 稔 滋賀医科大学 呼吸循環器内科
  清水 渉 国立循環器病研究センター 心臓血管内科
  座長のことば
ヒトゲノムプロジェクトの完遂と技術革新により、疾患原因の遺伝子レベルでの解明が進み、循環器疾患についても多くの原因遺伝子が同定されている。原因遺伝子の解明は、確定診断に役立つばかりでなく、病態の解明による理論的な治療法選択や新しい治療法の開発あるいは疾病予防の確立につながる。例えば致死性不整脈を引き起こす遺伝性不整脈である先天性QT延長症候群(LQTS)では、遺伝子診断率は50〜70%と高く、すでに13個の原因遺伝子(遺伝子型)が同定され遺伝子型特異的な治療や生活指導が実践されていることから保険診療が承認されている。遺伝性不整脈にはこの他にも、Brugada症候群、進行性心臓伝導障害 (PCCD)、カテコラミン誘発性多形性心室頻拍 (CPVT)、QT短縮症候群 (SQTS)などが含まれる。また、下側壁誘導心電図でJ波を認める早期再分極症候群 (ERS)という新しい致死性疾患群でも遺伝子変異が報告されている。一方で遺伝子診断の技術革新にはめざましいものがあり、新たな原因遺伝子の同定や各疾患の発症に関与する遺伝的修飾因子の同定に、Exome解析などの新たな遺伝子解析アプローチ法が導入されている。さらに山中教授らによって発見されたヒト皮膚細胞から作製できる多能性を有するヒトiPS細胞は、繰り返して十分な量の心筋細胞を誘導することができ、従来にない観点からの疾患原因の解明や治療法の開発を可能とし、先天性LQTS患者などの遺伝性不整脈にも応用されている。本シンポジウムでは、遺伝性不整脈に関する最新の知見とともに新しい遺伝子解析アプローチ法を発表していただき、遺伝性不整脈における遺伝子診断の現状と今後の展望について論議したい。
シンポジウムⅢ 公募
CRTの適応を再考する
座長 中里 祐二 順天堂大学浦安病院 循環器内科
  清水 昭彦 山口大学大学院医学系研究科 保健学系学域
  座長のことば
   現在本邦の慢性心不全治療のガイドラインによる心室再同期療法(CRT)の適応は、十分な薬物治療を行っても改善しないNYHAクラスⅢないしはクラスⅣの慢性心不全で、左室駆出率35%以下、QRS 幅120msec以上の心室内伝導障害を有する場合をクラスⅠとしている。ACC/AHA/HRSのガイドラインでもQRS幅を120msecとしているが、過去の臨床研究からは一般にQRS幅の広いものほどCRTの臨床効果が大であるとされ、CRTによる同期不全の改善、心機能の改善、および予後の改善が示された。このような背景から、より軽症の例に対しても、適切な薬物治療に加えCRTを導入することは早期に心不全の進行や、左室リモデリングを抑制し予後の改善が期待できるとの考えからNYHAクラスⅠ・Ⅱの例にも適応の広がりをみせている。これまでREVERSE、MADIT-CRTなどの臨床試験の結果からNYHAクラスⅡでQRS幅が150msec以上の例における心不全の抑制効果は示されたものの、長期生命予後に関しては未だ不明であり今後の検討が必要となる。さらに、CRTの適応決定に際しては、NYHAクラスの分類を評価するタイミングの問題、CRT-PとCRT-Dの使い分けという問題も残されている。
   一方、CRT治療におけるNon-responderの存在も適応決定には大きな問題となる。植え込み前にResponderを見極める普遍的な指標があれば、適応決定にあたり有用な情報となる。これまで心エコーにおける組織ドップラーをはじめ、多くの研究が行われてきたが、QRS幅以外にこれを上回る指標が見いだせていないのが現状である。CRTの適応を決定することは、患者のQOLのみならず生命予後の改善にも関連するものであり、本セッションを通じて、現時点におけるガイドラインの問題点、軽症例における適応の妥当性、responderを予測するための適切な指標などについて明らかにしてみたい。
 
パネルディスカッションⅠ 公募/一部指定
心室性不整脈起源を心電図で読み、アブレーションに活かす
座長 野上 昭彦 横浜労災病院 不整脈科
  高月 誠司 慶應義塾大学医学部 循環器内科
  座長のことば
カテーテルアブレーション治療によって多くの不整脈が根治できる時代になった。心室起源の不整脈に関しては、心室性期外収縮、心室頻拍と一部の心室細動症例も治療可能となってきている。カテーテルアブレーションでは不整脈の発生源の同定が必須であるがために、不整脈起源の解剖や心電図所見に関してアブレーションが行われる以前と比較して、格段に多くの知見が得られるようになった。特発性の心室性不整脈の起源としては右室流出路が以前から知られていたが、左室流出路、その中で大動脈弁直下起源のもの、左右の大動脈弁冠尖や大心静脈遠位部から前室間静脈への移行部といった心外膜側起源とするものが知られ、それぞれ心電図の特徴の詳細が明らかにされてきている。房室弁近傍も好発部位として知られ、三尖弁輪やHis束近傍、そして僧房弁輪起源の心室性不整脈が報告されている。最近では乳頭筋や左室のcruxを起源とする心室性不整脈の報告もある。いわゆるベラパミル感受性心室頻拍に関しては、左脚後枝、左脚前枝起源、upper septal起源が知られている。器質的心疾患に伴う心室性不整脈に関しては、心筋梗塞に合併する心室頻拍は心内膜側残存心筋に起源を有する例が多く、一部Purkinje線維に起源を有する例もある一方で、拡張型心筋症の心室頻拍は心外膜側に起源を有する例が多い。器質的心疾患ではマクロリエントリー性の心室頻拍も多く、また瘢痕組織の部位や大きさによっても心電図の波形は変化しうる。本セッションでは多岐にわたる心室性不整脈の心電図所見から部位をどのように推定し、どのようにアブレーションのストラテジーを考えるか、エクスパートに集まっていただき教育的に議論していく予定である。
パネルディスカッションⅡ 公募
電気的ストームの実態と対処
座長 栗田 隆志 近畿大学医学部 循環器内科
  池主 雅臣 新潟大学医学部 保健学科
  座長のことば
   重症心室性不整脈の治療において植え込み型除細動器(ICD)の役割はますます重要になってきました。欧米の大規模臨床研究の結果は低心機能で突然死のハイリスクと考えられる症例には、臨床的な不整脈の有無に関わらず一次予防としてICD治療を行うことを支持し、本邦のICD治療ガイドラインも適応の拡大が行われました。これらをうけて昨年度は本邦の植え込み台数は年間約7000台に増加しました。また心臓再同期治療(CRT)とICDの機能を備えたCRTDの登場によって、ICD、CRT、CRTDデバイスの選択をどのようにするかも臨床での重要課題となっております。
   重症心室性不整脈におけるデバイス治療が普及・発展する一方で、ICDが連続作動(electrical storm: ES)する症例に少なからず遭遇することが実感されます。ESは緊急の処置を要する重篤な状態であるばかりでなく、連続ショック通電による心機能低下、新たな不整脈の惹起、生活の質の著しい悪化の原因となり、生命予後にも関わる重要事象です。しかも治療に難渋するばかりでなく、ESの原因、病態、治療、予知に関する知見は十分といえない現状です。現在わが国でのESの実態を明らかにすべく、多施設共同研究(日本storm研究)が進行しております。
   本パネルでは重症心室性不整脈の治療に第一線で携わっている本邦の専門家にESの背後・治療/予防を電気生理学的に解明していただく予定にしております。ESへの十分な備えはデバイス治療の発展に不可欠であり、本パネルが参加される先生方の日常臨床のお役にたつことを祈念しております。
パネルディスカッションⅢ 指定
新規抗凝固薬を展望する
座長 井上 博 富山大学大学院医学薬学研究部内科学第二
  山下 武志 (財)心臓血管研究所
  座長のことば
   約50年にわたる「ワルファリン単独の抗凝固療法」という時代は終わり、「複数の抗凝固薬からの選択」という新しい時代が始まった。RE-LY試験、ROCKET-AF試験、ARISTOTLE試験と、新規抗凝固薬の有効性と安全性は大規模臨床試験の成績によって裏打ちされている。しかし、これらの臨床試験はTranslational Research PhaseⅠにすぎない。ある種の基準に沿って医師・患者が選択され、試験期間中はCRCおよび外部機関によりモニタリングされるという条件下の成績である。実際の臨床現場はPhaseⅡ、つまり様々な背景をもつ医師と患者で構成され、第三者的なモニタリングがなされないという異なった環境であり、PhaseⅠとのギャップは自ずから存在する。実際にトップバッターとして臨床に登場したダビガトランではその期待が過大となり、上市後約半年で安全性速報が報告される事態となった。新規抗凝固薬にはそれぞれの特性、それぞれの限界、そして適した患者と適しない患者が存在すると想定するのが妥当である。しかし、大規模臨床試験の成績だけではその姿は見えにくい。特に、我々の臨床現場、つまり日本人患者ではどのように考えるべきかという視点は今後新規抗凝固薬が臨床応用されるたびに論点となろう。本パネルディスカッションでは、大規模臨床試験に深くかかわった先生方と実際の臨床現場の代表となる先生方を交え、現実の臨床現場における新規抗凝固薬の将来展望をディスカッションしたい。
パネルディスカッションⅣ 公募/一部指定
リモートモニタリングの活用
座長 石川 利之 横浜市立大学附属病院循環器内科
  安部 治彦 産業医科大学医学部 不整脈先端治療学講座
  座長のことば
   デバイスのリモートモニタリングにより、デバイスに発生した問題を、より早期に発見する事が可能となる。ペースメーカー機能の自動化により、閾値測定、心内心電図波高、電池情報、ペースメーカーの作動状態、不整脈の発生等、多くの情報がリモートモニタリングでも得られるようになり、リモートモニタリングによるペースメーカー・チェックが可能となってきた。さらに、血行動態に関するモニタリングもある程度可能になり、患者さんが頻回に来院しなくともフォローすることが可能となってきた。
   当初、リモートモニタリングによる安全性の改善が強調されてきたが、患者さんの負担や医療コストを考え、来院回数を減らすことも重要な利点となる。リモートモニタリングにより、定期受診を減らしても問題がないことが示されている。
   一方、デバイス植込み数の急激な上昇により、デバイス外来の負担が大きくなってきている。近年、医師不足や医療保険上の問題よりデバイス植込み施設数は減少傾向にある。これまでのペースメーカー外来は飽和状態で、これ以上の負担増加には耐えられない施設も多い。そこで、リモートモニタリングによるデバイス外来の負担の軽減が求められるようになってきている。
   我が国においても、リモートモニタリングに保険が使えるようになり、今後普及して行く事が予想される。しかし、センター化が進み1施設あたりの症例数が多い欧米と異なり、我が国においては、1施設あたりの症例数が少ないが植込み施設数は非常に多い。国土も狭く、多くの患者さんは近くの病院に通院することが可能である。このような状況では、リモートモニタリングの意義は異なる可能性がある。さらに、保険が使えるようになったといっても、対面診療の原則は変わらず、受診しなければ費用を請求できないという問題もある。請求できる費用も低額で、診療収入はむしろ減ってしまう可能性もある。そして、リモートモニタリング、特に警告に対応するために、これまでよりも負担が増加し、病院の経営を圧迫する危険性もある。
   本パネルディスカッションにおいて、まだ始まったばかりのリモートモニタリングの実際の運用、利点および問題点について検討したい。
 
教育セミナー  
循環器医に必要な血液凝固の仕組みと抗凝固療法
演者 朝倉 英策金沢大学附属病院 高密度無菌治療部
教育セミナー  
EP臨床医に必要なイオン電流の知識
演者 小野 克重大分大学医学部 病態生理学講座
教育セミナー  
EP臨床医に必要な遺伝子診断の知識
演者 蒔田 直昌長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 分子病態生理学
教育セミナー  
心電図を深く読む
演者 村川 裕二帝京大学医学部附属溝口病院 第四内科
教育セミナー  
心内心電図を深く読む
演者 平尾 見三東京医科歯科大学医学部附属病院 循環器内科
 
エキスパートセッション  
CPVTの基礎と臨床
基礎
演者 渡部 裕新潟大学大学院 医歯学総合研究科 第一内科
臨床
演者 林 明聡日本医科大学内科学講座 循環器部門
DebateⅠ Deviceマネージメント  
1. 70歳、NYHA II-III, low EFの患者へのCRT治療は・・・
CRTpで十分である
演者 副島 京子杏林大学医学部循環器内科
CRTdにすべきである
演者 庄田 守男東京女子医科大学 循環器内科
2. ICD植込みにDFT測定は・・・
欠かせない
演者 栗田 隆志近畿大学医学部 循環器内科
必須でない
演者 吉田 明弘神戸大学大学院医学研究科循環器内科学分野
3. CRTD植込み患者に合併した発作性心房細動の管理は・・・
アブレーション(肺静脈/房室結節)
演者 松本 万夫埼玉医科大学国際医療センター 心臓内科
アミオダロン
演者 志賀 剛東京女子医科大学 循環器内科
DebateⅡ 心房細動のマネージメント  
1.  発作性心房細動のアブレーション治療は・・・
第1選択である
演者 熊谷 浩一郎福岡山王病院 ハートリズムセンター
第2/第3選択である
演者 山下 武志(財)心臓血管研究所
2. 持続性心房細動の管理:まずは・・・
リズムコントロール
演者 中里 祐二順天堂大学医学部附属浦安病院 循環器内科
レートコントロール
演者 池田 隆徳東邦大学医療センター大森病院 循環器内科
3. 他にリスク因子を持たない75歳以上高齢者への抗凝固療法は・・・
行わない
演者 新 博次日本医科大学附属多摩永山病院 内科・循環器内科
行う
演者 是恒 之宏大阪医療センター 臨床研究センター