CONTENTS

海外招聘者
William G. Stevenson USA Cardiovascular Division, Brigham and Women's Hospital, USA
Ralph J. Damiano, Jr. USA Department of Surgery, Washington University School of Medicine in St.Louis
Bruce L. Wilkoff USA Cardiovascular Medicine, Cleveland Clinic
Michael J. Ackerman USA Long QT Syndrome Clinic and the Mayo Clinic Windland Smith Rice Sudden Death Genomics Laboratory, Mayo Clinic
Derek Vincent Exner CANADA University of Calgary
Medicine and Community Health Sciences
Mélèze HOCINI  FRANCE Hôpital Cardiologique du Haut-Leveque
Serge Cazeau FRANCE Pacing and Rythmology Department
GH Paris-Saint-Joseph
Jean Claude Deharo FRANCE Cardiology Department, University Hospital La Timone, Marseilles, France
Gerhard Hindricks GERMANY University of Leipzig, Heart Center Abteilung für Rhythmologie
Massimo Santini ITALY San Filippo Neri Hospital
Head of Dept. of Cardiology
Domenico Corrado ITALY Department of Cardiac, Thoracic and Vascular Sciences, University of Padova Medical School, Padova, Italy
Shih Ann Chen TAIWAN Division of Cardiology, Taipei Veterans General Hospital
Yan Yao CHINA Fuwai Heart Hospital, Peking Union Medical College

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プログラム
シンポジウム I 指定・一部公募
心房細動の機序の解明とそれに基づく治療戦略
座長 末田 泰二郎広島大学大学院医歯薬学総合研究科病態制御医科学講座外科学
  土谷 健 EP Expert Doctors-Team Tsuchiya
  座長のことば
肺静脈隔離術(PVI)と左房本体へのアブレーションの導入によりPVIのみでは不十分であった慢性心房細動のアブレーションが可能となり、多くの心房細動患者にとり光明となった。肺静脈は心房細動の起源であるとともに維持にも重要な役割を果たしている事が示されているが、左房本体への治療の根拠となりえる実験的、臨床的な証拠は未だ十分ではなく心房細動の発生、維持の機序が充分に解明されたとは言いがたい。また、外科領域でも同様に双極電極を用いた高周波通電デバイスによるPVIが最近盛んに行われているが、どの症例でPVI単独でよいのかそれともFull Mazeが必要であるのかは明らかではない。さらに左房本体への通電に関しても、種々の線状通電、冠静脈洞内通電、CFAE通電、心外膜からの通電などの様々な術式が提唱されているが、どの症例にどこまで介入すればよいのかは明らかではない。このため症例によっては治療として不十分であったり、逆に過剰な治療のため2次性心房頻拍の発生やその他の合併症発生率を高めている可能性も指摘されている。本シンポジウムでは心房細動の発生維持の機序の解明と、症例に応じた適正な治療を選択するための機序に基づいた心房細動の治療法の選択と、拡大された適応に伴い発生機会が増えた合併症に対する予防に関する議論を期待したい。特に今回は内科のみならず外科の観点での最適治療についても議論を期待したい。
シンポジウム II 指定・一部公募
心室頻拍/心室細動のトータルマネージメント
座長 青沼 和隆 筑波大学大学院人間総合科学研究科 循環器内科
  新田 隆 日本医科大学外科学内分泌・心臓血管・呼吸器部門
  座長のことば
心室頻拍・細動(VT/VF)に対する第1選択治療はICDである。またICDに比し、CRTDは心機能改善効果も有することから、超低心機能例のVT/VFに対する更なるベネフィットが論じられている。しかし、ICD・CRTDは心臓突然死の予防には有効であるものの、不整脈そのものを治療する訳ではなく、VT/VFの治療に際してはICD以外の薬物療法、カテーテル・アブレーション、外科治療などによる多角的アプローチが必要であることは言うまでもない。抗不整脈薬、特にアミオダロンをはじめとするV群抗不整脈薬の使用はVT/VFの発生を抑制し、ICD患者においても不整脈の発生とICD作動頻度を低下させ、生命予後も改善することが示されている。また、器質的心疾患を伴わない安定したVTに対するカテーテル・アブレーションの有効性は広く認められており、器質的心疾患合併例のICD頻回作動やelectrical stormに対してはカテーテル・アブレーション、あるいは外科治療による不整脈器質に対する直接的治療が有効である。更に、外科治療ではVTだけでなく左室瘤や冠動脈病変などの合併器質的病変に対する治療も行える等の長所がある。本シンポジウムでは、VT/VFに対するICD・CRTD、薬物治療、カテーテル・アブレーション、外科治療などによる多角的アプローチにつきディスカッションする。
シンポジウム III    日本不整脈学会・日本心電学会合同シンポジウム 指定・一部公募
ここまで進んだ不整脈の遺伝子診断
座長 蒔田 直昌 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 内臓機能生理学分野
  清水 渉 国立循環器病センター 心臓血管内科
  座長のことば
1990年代後半から遺伝子診断の急速な進歩により、先天性QT延長症候群(LQTS)やBrugada症候群をはじめとする遺伝性不整脈は、心筋の活動電位を形成するイオンチャネルなどをコードする遺伝子上の変異により発症することが判明した。特に、先天性LQTSではすでに12個の遺伝子型が同定され、遺伝子診断率も50〜70%と高く、遺伝情報が患者の治療や生活指導に直結することから保険診療が承認されている。一方で、Brugada症候群などの遺伝子診断率は高いとは言えず、遺伝子診断は確定診断には有用であるが、リスク階層化、治療方針決定、予後推定などに有用であるとは言えない。また、疾患によっては未だ研究的な側面が強いものも存在する。本シンポジウムでは、この分野の最前線でご活躍の先生方に、不整脈の遺伝子診断に関する最新の情報を提供していただき、遺伝性不整脈疾患の現状の理解と今後の発展に寄与することを期待する。
シンポジウム IV 指定・一部公募
「Shock Reduction」ICD頻回作動を回避するために
−アルゴリズム・抗不整脈薬の活用と工夫−
座長 清水 昭彦 山口大学大学院医学系研究科 保健学系学域
  栗田 隆志 近畿大学医学部 循環器内科
  座長のことば
最近の新しい知見によると、適切・不適切を問わずICDからのショック作動は患者の生命予後に悪影響を与える可能性が示唆されている。意識化でのショック作動は患者のQOLにも重大な影響を与え、如何にショック作動の頻度を低く抑制するかという新しい視点に立ったICD設定や患者管理などが求められている。新しいアルゴリズムの機能や薬剤併用を最大限に発揮させる工夫とコツを討論する。

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パネルディスカッション I 指定
ICD患者の自動車運転に関する法制上の現況とその運用の改訂について
座長 池口 滋 滋賀県立成人病センター 循環器科
  渡辺 重行 筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター・水戸協同病院
  座長のことば
ICD植込み患者の自動車運転は、平成13年の道路交通法の改正、翌年の同法施行令の改定と警察庁交通局運転免許課長通達に沿って、許可あるいは停止される制度が運用されている。それに伴い、日本心臓ペーシング・電気生理学会(現、日本不整脈学会)、日本循環器学会、日本胸部外科学会合同の検討委員会が「不整脈に起因する失神例の運転免許取得に関する診断書作成と適性検査施行の合同検討委員会ステートメント」を平成15年に発表し、その具体的運用に関する指針を示した。同ステートメントの骨子は以下の4点にまとめられる。
  1. ICD新規植込み例では、植込み後6か月間が経過しICDの作動、意識消失ともに生じていなければ「運転を控えるべきとは言えない」旨の診断を考慮して良い。
  2. ICD植込み後にICDの作動あるいは意識消失を生じた症例においては、その後12か月間の観察によりICD作動も意識消失もみられなければ「運転を控えるべきとは言えない」旨の診断を考慮して良い。
  3. ICD植込み後の患者においては大型免許及び第二種免許の適性はないと考えられる。
  4. ICD の再植込み(ジェネレータ交換)後は,新規植込み後と同様に扱い、新たに6か月間の観察期間をおきその間運転を控えるよう指導(免許保留)する。ただしリードの変更を伴わないジェネレータ交換のみの場合はジェネレータの設定条件変更の有無と変更の内容を勘案し、主治医の判断で適宜 1から6 か月の観察期間をおき,その間は運転を控えるよう指導(免許保留)する。
上記内容には、ステートメント公表から6年が経過した現在、ジェネレータ交換後や一次予防目的でICDを植え込んだ症例においても現行の運転制限が必要かなど、再考を要する問題点が生じてきた。本パネルディスカッションは、まもなく発表される予定の本ステートメント改訂の背景とその内容を解説、議論し、実臨床に反映させることを目的とする。
パネルディスカッション II 指定・一部公募
不整脈非薬物治療の新しい治療法:展望と可能性
座長 松本 万夫 埼玉医科大学国際医療センター心臓内科
  小林 義典 東海大学医学部付属八王子病院 循環器内科
  座長のことば
不整脈の非薬物療法は、新しいdeviceが次々と開発されている。近年では、頻拍の基質解析における3D-CT/MRIの活用、コンピューターを駆使したマッピングテクノロジーの進歩、irrigation catheterに代表される新しい高周波通電デバイス、心臓外科領域での新しい通電デバイス、Balloonテクニックを用いた焼灼、高周波以外のエネルギーソース、ロボット技術を用いたカテーテルナビゲーションなどが話題となっている。本パネルディスカッションでは不整脈の非薬物治療におけるnew deviceについて広く深く議論を進め、次世代テクノロジーの長短を明らかにしていただきたい。
パネルディスカッション III 指定・一部公募
デバイスモニタリングの可能性と今後の課題
座長 阿部 芳久 秋田県成人病医療センター
  庄田 守男 東京女子医科大学 循環器内科
  座長のことば
ICDに代表される植込み型の抗不整脈治療機器は医用電子工学の発展により驚異的な発展を遂げている。中でも機器に記録・保存される詳細な心電現象は不整脈の病態解明や治療方針の決定に極めて重要な情報源となりうる。また、09年10月には植込み型ループレコーダーが我が国でも使用可能となり、心電図・不整脈診断の領域において新たな展開が期待される。さらに、無線応答機能を搭載したハイボルテージデバイスが我が国でも次々と発売され、通信網を駆使した遠隔モニタリングも機種選択において重要なアイテムとなりつつある。この画期的機能はリアルタイムでの情報転送と遅滞のない対応を可能にし、センター施設への通院頻度を減らすことに貢献するであろう。しかしながら、その一方で、保険償還の問題、あふれる情報を誰がどのように処理するかなど多くの課題も未解決のまま残されている。今回のシンポジウムでは植込み型デバイスに記録された情報によって病態の解明がどこまで可能か、遠隔モニタリングの現状はどこまで進んだのか、未来に何が期待されるのかについて考えたい。
パネルディスカッション IV 指定
pros&cons 「CRTPの功罪・中隔ペーシングの是非・モードスイッチングの是非」
座長 水谷 登 愛知医科大学 循環器内科
  中里 祐二 順天堂大学医学部附属浦安病院循環器内科
  座長のことば
昨今のデバイス治療は急速な進歩を遂げている。それとともに多くのエビデンスの蓄積により、従来の治療の概念からの脱却を要求される場面にしばしば遭遇する。しかし実際の臨床現場では、必ずしもエビデンスにあてはまらないことも数多く経験するところであり、議論はつきない。このセッションでは以下の3つのテーマについての立場でディベートを行う予定である。この討論を通して、それぞれのテーマに関する現状認識と理解を深めることができれば幸いである。
テーマ1. CRTの適応例にはICD機能は不要である
テーマ2. 心室リードの留置部位は中隔にすべきである
テーマ3. DDD適応例は心室ペーシング回避・低減モードにすべきである
抄録
パネルディスカッション
pros&cons 「CRTPの功罪・中隔ペーシングの是非・モードスイッチングの是非」
 
テーマ1
1.CRTPの功罪
 pro因田 恭也名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学
日本循環器学会による「不整脈の非薬物治療ガイドライン(2006年改訂版)」には、心室頻拍の有無に関わらない左室収縮機能低下例に対するICDの適応について、「冠動脈疾患または拡張型心筋症に基づく慢性心不全で,十分な薬物治療を行ってもNYHAクラスIIまたはクラスIIIの心不全症状を有し,左室駆出率35% 以下の場合」にClassIIaと記されている。CRTの適応には左室駆出率35% 以下であることが含まれ、全てCRTDとすべきかのような印象が与えられている。しかしながら、CRTを行うことにより左室駆出率が改善し、不整脈リスクが軽減する症例も存在する。CRT植え込み前に治療効果あるいはCRTレスポンダーが予測できるならば、CRTDではなくCRTPで十分な予後改善が得られるはずである。このことは医療経済的にも重要な課題である。ディスカッションでは、これまでの報告やわれわれの症例から、CRTによる心機能改善効果と不整脈発生の関わりを検討し、CRTPとすべき症例の選択方法を提案する。さらにレスポンダー予測を向上させるための指標にも言及したい。
 con奥村 謙弘前大学大学院医学研究科循環呼吸腎臓内科学
心臓再同期療法(CRT)の適応例は心不全のみでなく心臓突然死のリスクを有する。ICDはCRTが適応となる左室機能低下例において突然死を予防し生命予後を改善する。これまでの主要なCRT臨床試験のメタ解析の結果では、ペーシング機能のみのCRT-Pは総死亡、心不全死を減少するものの、心臓突然死の予防効果はなかった。CRT-Pにより心臓突然死の相対危険度が1.99に増加したという報告もある。COMPANION試験では薬物治療、CRT-P、CRT-Dの3群で生命予後が比較検討されたが、心臓突然死の発生率を見ると、CRT-P群では薬物治療群より高く、CRT-D群でもっとも低値であった。ヨーロッパの前向き登録研究では、CRT-DがCRT-Pに比して死亡率を20%(P=0.284)、心臓突然死を96%(P<0.002)減少させた。以上より、CRT適応例ではCRT-Dにより、総死亡、心臓死とともに心臓突然死も減少する可能性が高く、CRT-PではなくCRT-Dが推奨される。我々の施設でCRT-Dを施行した連続101例中、持続性心室頻拍/心室細動(VT/VF)の既往例は31例(2次予防群)で、残りの70例はVT/VFの既往のない突然死1次予防群であった。1次予防群と2次予防群との間に年齢、性別、NYHAクラス、左室駆出率に差はなく、投薬内容もアミオダロンが2次予防群で多く処方されていた以外に差はなかった。平均22ヶ月の観察期間において、2次予防群では15例(48%)でVT/VFに対して適切治療が行われ、14例(93%)は単形性VTで、平均レートは153±24拍/分であった。一方、1次予防群では13例(19%)において適切治療が行われ、12例(92%)は単形性VTで、平均レートは188±35拍/分であった。両群ともVTの約60%はペーシング治療で、残りはショック治療で停止した。以上のように1次予防群においても経過中にVTが多く認められ、しかもレートが速いことが示された。CRTの適応となる心機能低下例はVT/VF、突然死のリスクが高く、ICD機能が不可欠であり、CRT-PではなくCRT-Dを適用すべきである。
 
テーマ2
2.中隔ペーシングの是非
 pro安部 治彦産業医科大学医学部不整脈先端治療学
 科学的背景に基づいた医療を実践し、患者に提供することは臨床医学において最も重要なことの一つである。ペーシング治療を考慮する場合、単なる変時不全の改善のみが目的と考えている臨床医は現在ほとんどいない。即ち、変時不全の改善と同時に、患者のQOL改善のみならず心房細動の発生抑制や心機能を長期間にわたって低下させることなく保持したいと考えている。
 変時不全は、心房・心室のペーシングのみで改善されるが、心房細動の抑制効果や心機能に及ぼす影響はペーシング部位によって大きく影響を受け、異なる結果をもたらすと考えられている。右室心尖部ペーシングが最も心機能低下をもたらす心室ペーシング部位であること、同部位からのペーシング率が高まれば高まる程心房細動の発生率が上昇することは既にエビデンスとして証明されている。心機能保持の点からは、ヒス束ペーシングや左室ペーシングが優れていると考えられているが、手技的な困難性やペーシングリードの安定性、手術時間、等の現実的問題点が存在する。更に、dual siteやbi-ventricularあるいはbi-atrialペーシングは医療経済上の問題点が発生する。これらの点を総合的に考慮すると、1)心機能保持の面からは、心室ペーシング率を極力減らす努力を行うこと、及び心室ペーシング部位を心尖部から中隔(右室流出路を含む)に変更すること、2)心房細動発生抑制の面からは、心室ペーシング率を極力減らす努力を行うこと、及び心房ペーシング部位を右心耳から中隔に変更すること、等が心臓生理学の面からも優れていると考えられている。
 国内で心臓ペーシング治療が始まって約40年経過した現在、我々臨床医は単に変時不全の改善のみを目的とした植込み治療ではなく、より生理的でより患者のQOLに配慮した治療を行う時代に突入していることを決して忘れてはいけない。
 con中島 博板橋中央総合病院 不整脈・心不全科
ここ数年、心房心室を問わず中隔ペーシングが一つのファッションとなっている。スクリューインリードは中隔ペーシングには必須のリードであるが、心内膜を積極的に侵襲するため、タインドリードとは異なった手技と注意点がある。最悪の合併症は穿孔であるが、右心系は大動脈を取り囲む位置にあり大動脈に穿孔する可能性もある。中隔ペーシングを行う場合にはそのリスクと中隔ペーシングに期待する効果の双方を勘案する必要がある。心室中隔ペーシングと心房中隔ペーシングは全く異なった観点から提唱されてきた。右室心尖部は心室を心内膜側から安定してペーシングするに誠に都合の良い部位であり、未だに使用され続けている。しかしその収縮は正常心とは全く異なり、すでに1925年にはWiggestが右室心尖部ペーシングによる左室機能障害を報告している。大規模臨床試験が明らかにしたものは、Wiggestの示した問題点を臨床的なエヴィデンスとして示したに過ぎない。しかし、エヴィデンスが示したものは右室ペーシング率を減少させる努力が必要だということで、中隔ペーシングの右室心尖部ペーシングに対する優位性ではない。また、心室中隔の解剖学的定義も定まったものはない。一方の心房中隔ペーシングは心房細動の予防という観点に立っている。心房頻脈性不整脈には心房内あるいは両房内伝導遅延が関与している。これを防止するために心房多点ペーシングあるいはalternative pacing site pacingが試みられてきた。心房中隔ペーシングでは、両房間の伝導がある高位心房中隔(Bachmann’s bundle)と下位心房中隔(triange of Koch)でのペーシングが試みられているがエヴィデンスが得られているわけではない。従って現時点では、すべての症例に積極的に中隔ペーシングを推進する背景はない。
 特別発言井川 修十字会野島病院 循環器内科
房室同期性に加え、さらに心機能を考慮したペーシングスタイルを確立すべく「至適ペーシング」部位についての検討がなされるようになってから久しい。 比較的長くその議論がなされてきたにもかかわらず、いまだ、右心耳に代わる心房ペーシング部位や右室心尖部に代わる心室ペーシング部位はどこかの結論は得られていない。確かにalternative pacing site として心房中隔、心室中隔が提唱されてはいるものの、ペーシングリード留置部位は報告者によって大きく異なり、その妥当性を検証する際の問題となっている。したがって、それらの報告をもとに中隔ペーシングの有効性を判断することは大変、むずかしい。さらに厄介なことは、報告者ごとに中隔の構造認識が異なっていることである。中隔といってもいったいどこをペーシングしているのか客観性に乏しく、これがペーシングの有効性評価の問題をさらに大きくしている。 ここではペーシングリードを挿入する右房、右室の構造を確認しつつ、心房および心室中隔の解剖を解説する。また、ペーシングリード留置部位として心房および心室中隔が適当であるか、あえて留置するとすればどの点が最適であるか、合併症を避けるためにはどこに注意を払うべきかを考える。
 
テーマ3
3.DDDのVペース低減・回避
 pro石川 利之横浜市立大学医学部 循環器内科
 心房・心室の協調性が保たれた生理的ペーシングは心機能を改善し、心房負荷を軽減し、心房細動の発生頻度を減少させる。一方、心室ペーシングにより心機能は低下する。さらに、心室ペーシング後の不応期の間は心房感知が行われず、自己収縮を無視して心房や心室のペーシングが強制的に行われるために、心房細動が誘発される危険性がある。房室伝導が保たれた正常心機能の洞不全症候群を対象としたMOST試験では、心室ペーシング40%以上の症例において心房細動および心不全の発生が有意に多かった。房室伝導が保たれた症例の多くには心室ペーシングは不要であり、心室のペーシングデメリットが無視できない。しかし、そのような症例においても、房室ブロックの発生が無視できない頻度で発生することが知られている。洞不全症候群症例ではペースメーカー植込み時は房室伝導に問題がなくとも、植え込み後に5%前後の症例に房室ブロックが起こり、その約半数に失神等の事故が起こるとされている。心房ペースメーカーでは房室ブロックに対応できないので、DDDペースメーカーが植込まれることが多い。しかし、房室ブロック発生時以外は心室ペーシングが不必要である洞不全症候群、ICD植込み症例等においては、不必要な心室ペーシングは可能な限り避けるべきであると考えられる。そこで、通常は心房ペーシング(AAI)で作動し、房室ブロック発生時にDDDへモードを変換するアルゴリズであるMVP (Managed Ventricular Pacing, Medtronic)やSafeR (Sorin)などの心室ペーシングを最少化するアルゴリズムが開発された。SAVEPACe試験の結果、心室ペーシングを最少化するアルゴリズムにより持続性心房細動の発生を有意に減少させることができることが明らかになった。

通常の設定で心室ペーシング率が高い症例では、房室自己伝導がある時には自己伝導を優先するAV delay hysteresisが利用されるが、極端に長いPQ時間でペーシングされるデメリットや、期待した程は心室ペーシング率が低下しない問題があった。
 con須賀 幾自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科
大規模試験により、心室ペーシング(Vp)率の上昇に従い心房細動や心不全の発症が増加することが明らかになった。この結果をふまえ、不要なVpを回避すべく、AAIやDDIモードの使用、AV delayの延長などが試みられてきた。しかし、これらの手段では期待するほどのVp低減効果が得られず、弊害も明らかになった。AAIでは房室伝導障害が発生すると対応できず、また運動時にPQ時間が延長するとAAIR syndromeが発生することがある。DDIではVA counterで作動する機種で設定AV delayと自己PQ時間が異なると不適切なペーシングレート上昇が生じる。また、AV delayを延長すると、AV delay+PVARPが設定可能な上限レートであるため、上限レートに制限が生じる。これを避けるべくPVARPを短縮するとしばしばpacemaker mediated tachycardiaが生じる。また、心室受攻期にペーシングが生じたり、心機能低下症例では血行動態悪化が生じる可能性がある。 これらの問題点を避けつつ安全にVpを低減させるべくVp低減モードスイッチングが開発された。Vp低減モードスイッチングには大別してAV delay延長機能とAAI類似モード変換機能があるが、これらはいつでも安全かつ有用な夢のアルゴリズムではない。不用意に使用すると重篤な健康被害を生じる可能性があり、実際の致死的不整脈発生例も報告された。この原因は、アルゴリズム作動中は、AV delay延長機能ではAV delay延長時と、AAI類似モード変換機能ではAAIモードと同様の問題があるにもかかわらず、それを使用する側が理解せずに安易に使用することにある。 Vp低減モードスイッチングは有用な機能であるが、その制限や弊害を理解せずに闇雲に設定すべきではない。デバイス治療に携わる医療者には、盲目的に機能を信用したり、安易に業者任せにすることなく、デバイスの設定とその作動を理解して使用する姿勢が求められている。
パネルディスカッション V 指定・一部公募
Debate:慢性心房細動の非薬物治療(ベストの治療方法を探る)
座長 磯部 文隆 愛知医科大学心臓外科
  鵜野 起久也 土浦協同病院 心臓センター内科
  座長のことば
慢性心房細動の最適な治療法に関するコンセンサスは今だに得られていない。外科的手術は良好な成績を上げているが、開心術が必要であり侵襲度が高い。アブレーションは多くの施設より異なるアプローチが提唱され、ある程度の成績が報告されているが、それぞれがメカニズムに対して異なる考え方を基にした治療戦略を持っている混沌とした状況で、一定の見解が共有されている訳ではない。今回のdebateでは、一日目のシンポジウムを引き継ぎ、各施設の手技、エンドポイント、成績、手技の基礎となる考え方、すなわちその治療法がなぜ有効であると考えるのかについて述べていただき、討論を行いたい。
パネルディスカッション VI 指定・一部公募
重症心室性不整脈アブレーションの未来
座長 野上 昭彦 横浜労災病院 循環器内科
  副島 京子 川崎市立多摩病院 循環器科
  座長のことば
近年の不整脈学における大きな発明・発見は、植込み型除細動器、カテーテルアブレーション、遺伝子診断である。植込み型除細動器の出現により心室頻拍・心室細動などの重症心室性不整脈による突然死が予防できるようになった。しかし、植込み型除細動器はあくまで不整脈が出現してからの治療であり、不整脈を抑制させる治療ではない。また、心室頻拍・心室細動が繰り返し出現するelectrical stormの状態に陥ると、植込み型除細動器の効果にも限界が生じる。一方、カテーテルアブレーションは多くの上室性不整脈を「根治」させることに成功したが、重症心室性不整脈に対してはまだまだ問題点も多く、議論・改良の余地がある。Electro-anatomical MappingシステムやIrrigationシステムの導入によって、従来であれは治療不能であった血行動態が破綻する心室頻拍、さらには多形性心室頻拍・心室細動に対するカテーテルアブレーションも報告されるようになった。また、心内膜側からは不可能であった心外膜側へのカテーテルアブレーションも心外膜アプローチの登場によって可能になっている。今回のシンポジウムでは、このような重症心室性不整脈に対するカテーテルアブレーションついて様々な角度から検討を加え、未来の可能性を明らかにしていきたい。
パネルディスカッション VII 公募・一部指定
失神の鑑別とマネージメント
座長 小林 洋一 昭和大学医学部内科学講座循環器内科学部門
  安部 治彦 産業医科大学医学部 不整脈先端治療学講座
  座長のことば
失神の治療はその原因疾患により異なるため、原因疾患の鑑別診断が極めて重要である。心原性失神は生命予後不良で心臓突然死の唯一の前兆でもあるため早期の診断が必要である。一方、神経反射性失神の生命予後は良好であるものの日常生活におけるQOLは著しく低下する。失神患者では原因の如何を問わず、就労制限や自動車運転制限もあり、社会生活上での種々の制約を受けるため早期の診断と治療が必要である。しかしながら失神の原因疾患の同定や鑑別疾患は容易ではなく、原因不明の場合も少なくない。原因不明の失神では治療を行うことが出来ないため、社会的制約は解除されない。最近、植込み型ループレコーダー(ILR)が国内でも使用可能となったが、失神の原因を同定する上で非常に有用な方法として期待されている。ESCガイドライン2009では、心原性失神が疑われる患者においてILRはEPSより早期に施行すべき検査と位置付けられている。本セッシヨンでは、失神の鑑別診断のための初期評価やリスクの層別化におけるILRの役割、さらに失神患者が受ける社会的影響に至るまで広く議論したい。

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若手医師教育セミナー I  
Unknown Device
モデレーター 三橋 武司 自治医科大学循環器内科
  セミナー概要
昨年までこの若手医師教育セミナーunknown deviceは近畿大学の栗田隆志先生がモデレーターとして主にICDのテレメトリー心電図を中心に4名の先生を回答者として討論,解説されてきました.今年は栗田先生からのご指名によりわたくしがモデレーターとして担当をすることになりました.今回も栗田先生の方式に従ってICDを中心として皆さんに教育的な症例を呈示したいと考えていますが,特に若手医師教育という観点から少し基本的な症例も多く提示する予定です.またICDの頻拍検出アルゴリズムは各社異なるためそれぞれの特徴について,私なりに解説を加えたいと思います.さらに最近のデバイスはモニタリング機能も充実してきており,それらの解説も少し試みたいと考えています.明日からのICD,CRT外来に少しでも役立つようなセミナーにしたいと思っておりますのでご協力をお願いいたします.
今年は,以下の先生方に回答をお願いします.
阿部 芳久      秋田県成人病センター 循環器科
笠井 篤信      山田赤十字病院 循環器科
西井 伸洋      岡山大学大学院医歯学総合研究科 循環器内科
真中 哲之      東京女子医科大学 循環器内科
若手医師教育セミナー II  
Unknown EPS・Unknown ECG
モデレーター 鈴木 文男 結核予防会複十字病院循環器科
  中川 博 オクラホマ大学
  庭野 慎一 北里大学医学部循環器内科学
  セミナー概要
今年は、鈴木文男、中川博、庭野慎一の三先生に、過去に遭遇した興味深い症例を持参して頂いて、それぞれ持ち時間30分の中でお互いにそのトレースから何を読み取れるかを披露して頂き、また会場からも意見をつのり、EPSの奥深さを一緒に味わって頂きたい。

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教育セミナー I  
デバイスのトラブルシューティング
座長 今井 克彦 広島大学病院 心臓血管外科
チューター Bruce Wilkoff Cardiovascular Medicine, Cleveland Clinic
  中里 祐二 順天堂大学浦安病院 循環器内科
  庄田 守男 東京女子医科大学 循環器内科
  セミナー概要
不整脈学会の年次学術大会では,若手教育セミナーunknown deviceが近年ではレギュラーセッションとして毎年行われ,例年多くの聴衆と伴に実りある討論が行われている.これは,植込みデバイスの進化と適応拡大,さらには診断技術の向上などにより植込み数が年々増加していることが背景にあり,さらに植込みデバイスに興味を持つ医療関係者も増加していることを表していると考えられる.一方で,植込み数の増加率を上回る勢いで感染症などのトラブルが増加しているとの報告があり,デバイスの総合的管理という観点からは,プログラミングの知識のみでは不十分であることも事実である.今回は,大会長のご好意により,プログラミング以外のデバイス管理に関する教育セッションを企画していただいた.国内外の著名なデバイスインプランターにチューターとしてその管理とトラブル発生時のHow Toについて基本的な事柄から教育的にご講演いただき,明日からの臨床に役立てられるセッションにしたいと願っている.
教育セミナー II    日本不整脈学会・日本心電学会合同セミナー  
非抗不整脈薬の抗不整脈作用
座長 堀江 稔 滋賀医科大学呼吸循環器科内科
演者 犀川 哲典 大分大学医学部臨床検査診断学
  セミナー概要
前回の日本不整脈学会は日本心電学会との合同開催であり、このとき不整脈に関する基礎から臨床までの幅広い分野からの参加者があり活発な情報交換と討議が出来たということで、今後益々、両学会の合同開催が論議されております.また、不整脈専門医制度の制定が両学会の主導で始まっており、このような機運の中で、両学会合同の教育セミナーが開催されるのは非常にタイムリーであります.このような企画をされた磯部会長のご慧眼と思います.記念すべき最初のセミナーでは、今年の第27回日本心電学会学術集会会長の犀川哲典先生(大分大学医学部臨床検査診断学)に、「非抗不整脈薬の抗不整脈作用」というタイトルで、不整脈の薬物療法についてお話しいただきます.ただ、従来の抗不整脈薬を用いた治療についてではなく、非不整脈薬による不整脈治療のお話です.例えば、近年、注目されている高血圧症に対する薬物(とくにレニン・アンギオテンシン系の阻害薬)やスタチンなどによる心房細動治療の有用性などに焦点が当てられ、実験的なデータも含めてご紹介いただく予定です.多くの先生方のご参加をお願いいたします.
教育セミナー III  
Oral presentation clinic
座長 杉 薫 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科
チューター William G. StevensonCardiovascular Division, Brigham and Women's Hospital
  Bruce L. Wilkoff Cardiovascular Medicine, Cleveland Clinic
  新田 隆 日本医科大学 心臓血管外科
  副島 京子 川崎市立多摩病院 循環器科
演者 榎本 善成 東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科
  鈴木 靖司 愛知医科大学 循環器内科
  村田 広茂 日本医科大学 第1内科
  宮本 康二 EP expert doctors-Team Tsuchiya
  山崎 浩 筑波大学大学院人間総合科学研究科 循環器内科
  セミナー概要
日本人は英語での発表が下手で、欧米だけでなく他のアジア諸国と比較しても、せっかく発表内容が素晴しいのにいわゆるpresentation skillが伴っていないためどうしても見劣りしてしまい大変損をしていると感じる。今回Oral presentation clinicと言う名前で、若手3名に英語で短いプレゼンをして貰い、それに対して講評と改善点の指摘を行なうという企画をした。これから海外で発表する機会が増える若手医師にどしどし参加して頂きたい。発表内容は新規の物でも、過去に外国で発表した物でも良い。演題募集期間は12月中旬〜1月末日まで、詳しくは後日ご案内予定です。

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ファイアサイドセミナー  
抗不整脈薬の後発医薬品について考える
座長 鎌倉 史郎 国立循環器病研究センター 心臓血管内科
  座長のことば
 平成20年4月から、処方箋を発行する際に医師の署名がない場合は、薬剤師の判断で先発薬品を後発薬品に変更可能とする制度が導入された。また、平成22年度の診療報酬改定では、「後発医薬品調剤体制加算」の算定要件が変更され、後発薬の調剤数量の割合が30%を越える場合は、処方箋受付1回毎に、17点を加算できるようになった(それまでは4点)。さらに、処方医に確認することなく、薬品の形状やメーカー名を変更してよいこととなった。この一連の制度変更により、加算の算定可否が薬局経営に大きく関与する結果となり、現在、薬局は自らの利潤追求のために、できる限りの先発薬品を後発薬品に変更する方向に向かっている。ここで最も問題となるのが後発薬品の品質である。これら後発薬品は生物学的同等性試験でその品質が保証されたことになっている。しかしながら、生物学的同等性試験は、限られた人数(10-20人)の健常成人を対象として先発薬、後発薬を単回投与する方法により、薬物血中濃度の推移を比較して、両群の間に統計学的な差がないことを証明しているにすぎない。したがって、低心機能例または致死性不整脈例が投与対象の薬剤においても、健常人のデータだけに基づいて後発薬の効能が同等と判断される。また、ある種の薬剤では、長期投与で血中濃度が漸次増加すると共に、作用機序が変化するが、この試験方法では長期投与における安全性のみならず、薬理学的データも欠落したままで後発薬品が承認される。本ファイアサイドセミナーでは、これらの事実を踏まえた上で、抗不整脈薬の後発薬品導入の利点、欠点や、専門医としてとるべき態度などを討論したい。

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