臨床心電図解析の実際 - 不整脈編 第4章
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4.房室ブロックECG J036(12誘導を6誘導ずつ連続記録)J034、J035と同様、完全房室ブロックの際に観察された現象である。R1-R2、R3-R4、R4-R5、R6-R7は約1.5秒で一定であることから、房室接合部補充調律と判断される。ここでR2-R3、R5-R6及びR7-R8が短縮している機序はどのように考えられるであろうか。1分間ほど連続記録し、すべてのRR間隔に関して、その際のRP間隔及びPR間隔を計測し、横軸にRP間隔、縦軸にPR間隔を取って分散図を書くと、ほとんどのプロットが-45度のライン上にあるのに対し、RP間隔は0.8~1.0秒の間に限りPR間隔がほぼ0.20秒前後に短縮し、その結果RR間隔が短縮していることが証明された。すなわち、先行R波から0.8~1.0秒の時相にあらわれたP波(ここではP4、P9、P12)のみが正常の房室伝導時間で、心室まで伝導する過常期伝導(supernormal phase of conduction)であることが判明した。一般的に、過常期はJ035例で示したようにT波の下行脚あたりに存在するとされているが、本例ではT波からはるかに離れた時相にあった。359

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