臨床心電図解析の実際 - 不整脈編 第3章
80/170

第3章 心房性不整脈ECG A031(V1、V2誘導の一部を拡大)心房-心室間の伝導様式を考えてみよう。記録中にP波は8個、QRS波は6個確認される。P2→R2、P3→R3、P8→R6はPR間隔0.16秒程度で、心房から心室に正常に伝導していることは明らかである。P4とP6はQRS波が脱落しており、途中でブロックされたと判断される。P1、P5、P7はそれぞれR1、R4、R5に先行しているが、PR間隔が短か過ぎるため、正常伝導路を通っているとは考えられない。よく見ると、R1、R4、R5のQRS波は、R2、R3、R6より明らかにS波が深い。すなわち、心房からの伝導した興奮によって形成されたQRS波ではなく、房室接合部から発生した補充収縮らしい。これらの所見から、心房から心室への伝導が突然脱落するMobitzⅡ型房室ブロック及び房室接合部補充収縮を伴う異所性心房頻拍(PAT with Block)と診断される。ジギタリス中毒の患者さんで、時おり観察される所見である。 168

元のページ  ../index.html#80

このブックを見る