心電図 こぼれ話第11話 変な右脚ブロック 恩師の木村栄一先生は心電図を大変大切になさる方であった。夜になると外来の隅でその日に記録されたすべての心電図に目を通し、興味のある心電図を見つけると巻物にしてメモを付け、箱にきちんと整理して保管されていた。先生が亡くなられた後、小生がその心電図を引き継ぎ時々拝見していたのであるが、あるとき「変な右脚ブロック」とメモのある心電図が目に入った。何と、まさに今でいうBrugada症候群type 1に相当する心電図であった。木村先生は30年以上前に異常所見に気付いていたのである。弟子の我々がもう少し一生懸命同様の心電図を探していたら、“Brugada症候群”ではなく“Kimura症候群”になっていたかも……。
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