第3章 心房性不整脈ECG A041(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ誘導の一部を拡大)①の心拍を詳細に観察すると、QRS幅が広くなっている原因は、QRS波の前半部分ではなく後半部分の変形によるように思われる。Ⅰ、Ⅱ誘導で幅の広いS波が見られることから、右脚の伝導が遅延していると考えられる。また、この心拍のT波の向きは正常心拍と同じである。これらの所見から、①の心拍は心室期外収縮ではなく、心室内変行伝導によってQRS幅が広くなったものと判断される。通常、心室内変行伝導は先行収縮からの連結期が急に短縮した際に起こる。しかし、本例で①の心拍とほぼ同じタイミングで出現した心拍②、③では、変行伝導は起こっていない。この現象は、先行収縮の興奮に伴う右脚の不応期の長さで説明可能である。すなわち、先行収縮と先々行収縮のRR間隔が長いほど不応期も長くなるため、①では右脚の不応期にぶつかって変行伝導をきたすのに対し、②、③では先行RR間隔が短く不応期も で示すように短いため、不応期からさめた右脚を正常に伝導したと考えられる。190
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