臨床心電図解析の実際 ― 不適切自動診断編
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V1ⅠⅢV3V4V5aVLaVFV2V6R2R1ⅡP2P1aVRR3R4P3P4R5R662R7R8R9R1からR9まで9個のQRS波が確認されるが、R1、R2とR4~R9はまったく波形が異なり、R3は両者の中間型を呈しているようである。細かく見ていくと、R1、R2はQRS幅正常で洞性P波が先行し、PR間隔160msec程度の「正常洞調律」である。R4~R9はQRS幅130msec程度の左脚ブロック型で先行するP波は見当たらず、かつRR間隔は1080msecで一定であることから、心拍数55/分の右室由来の「心室調律」と判断される。R3はQRS幅90msecで洞性P波が先行しているが、PR間隔は120msecと短く、電気軸もR2とR4の中間を示しているなどの点から、洞調律と心室調律の「融合収縮」と考えられる。つまり、一連の記録は洞調律から心室調律に移行して行く瞬間をとらえているもので、前記の自動診断結果はまったく当てはまらない。本例のように、記録の途中でリズムが大きく変わる場合には自動診断はほぼお手上げで、診断アルゴリズムがほとんど整備されておらず、コンピュータ診断の盲点の一つである。なお、この心室調律が「補充調律」であるのか、「促進型心室固有調律」であるのかの判断はなかなか難しいところであるが、視認できるP波(P1~P4)のPP間隔は1140msec程度でほぼ一定であり、左脚ブロック型QRSのRR間隔1080msecより明らかに長い点、および心室補充調律は通常心拍数40/分未満である点(本例では55/分)からみて、連続する幅広いQRSは「促進型心室固有調律(AIVR:accelerated idio-ventricular rhythm)」と考えてよさそうである。アルゴリズム不備-3 Answer

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