臨床心電図解析の実際 ― 不適切自動診断編
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×Ⅰ×ⅡⅢV3V4V6aVRaVLaVFV1V2V5P1P2P3P4P6P560P7P8P9P10P波はP1からP10まで10個観察され、P3およびP8の後にはQRS波が見られない()。PR間隔を計測すると、図()に示すように【徐々に延長~QRS脱落~短縮~徐々に延長~QRS脱落~短縮】という典型的なウェンケバッハ周期を認め、「モビッツI型(ウェンケバッハ型)第2度房室ブロック」の診断は難しくない。では、なぜ自動診断では「洞房ブロック」という不適切診断に至ったのであろうか。洞房ブロックの診断はPP間隔が突然2倍ないし整数倍になることが条件である。本例では、たとえP3とP8を読み落としたと仮定しても、P2-P4間隔はP1-P2間隔の2.4倍、P7-P9間隔はP6-P7間隔の1.8倍程度で、条件に合致しない。やはり「洞房ブロック」の診断アルゴリズムに問題がありそうである。また、PR間隔の自動計測値が242msecであったことから「PR延長」と診断されたようであるが、そもそもPR間隔は一定ではなく、計測そのものが不適切である。QT間隔は390msec、QTc332と自動計測され、「QT短縮」とされているが、QT間隔の補正にどのRR間隔を用いたのであろうか。少なくとも伝導が途絶した心拍を挟む長いRR間隔は補正に用いるべきではなく、コンピュータによる補正の仕方には大いに疑問が残る。アルゴリズム不備-2 Answer

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