臨床心電図解析の実際 ― 不適切自動診断編
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aⅠⅡⅢbcV1V2V3V5V6aVRaVLaVFV450一見してまったく異常所見のない「正常洞調律」と判断されるが、なぜ自動診断では上記のような診断が下されたのであろうか。コンピュータによる自動計測値を詳細に見ると、診断に関係するQRS幅は120msec、QT間隔は395msec、QTcは0.462となっていた。手動で実際の心電図を計測してみると、aに示すように、QRS幅は90msec前後でまったく延長はなく、胸部誘導のQRSパターンからも「左脚ブロック」の所見はない。一方、QT間隔に関してはV3誘導の一部を拡大して示すが、左側の接線法による詳細計測(b)では360msec、右側の閾値法(c)では390msecと計測される。QTcBはそれぞれ0.42、0.46となり、詳細なQT延長の評価に用いられる接線法ではQT間隔は正常と判断される。T波の終末部は本例のようにしばしば緩徐に基線に移行するため、閾値法では長めに計測されることが多く、たとえ自動診断であってもQT間隔を正確に評価する際には接線法を用いるのが望ましい。計測ミス-5 Answer

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