臨床心電図解析の実際 ― 不適切自動診断編
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V1V2V3V4V5V6aVRaVLaVF46赤矢印()で示す心室期外収縮が多発しており、洞収縮–洞収縮–期外収縮のリズムを繰り返していることから、「心室三段脈」の自動診断は正確である。QT間隔は0.431秒、QTcBは0.516、QTcFは0.486と自動計測され、補正によるQTcの値から「QT延長」との診断に至ったようである。QT間隔を目視で計測すると、心拍によって多少のばらつきはあるが、洞収縮心拍のQT間隔はおおよそ0.42~0.43秒と測定され、自動計測は比較的正確なようである。問題は補正の仕方で、aからmまでの13個のRR間隔()のうちどれを採用するかによって大きく異なる結果になる。この中で周期aは、先行する心室期外収縮の代償性休止期を含む回復周期であるため、洞周期を大幅に上回る値を示すことになり、補正に用いるには不適切である。一方、周期c、f、i、lは期外収縮の連結期、周期d、g、j、mは間入性期外収縮からの回復周期のために、いずれもRR間隔()が極端に短く、補正に用いるべきではない。どのRR間隔を補正に用いるべきか、明確な基準はないが、基本的には連続する洞収縮同士の間隔、すなわち本例ではb、e、h、k()を洞周期として採用し、その平均値(0.94秒)を補正に用いるのが最も適切であろう。その値を補正に用いることによって、QTcBは0.445、QTcFは0.440となり、QT間隔はまったく正常と評価される。本例では期外収縮が多発しているので、補正のための適切な洞周期RR間隔をコンピュータで求めるのが難しく、おそらく全RR間隔の平均値約0.7秒を補正に用いたため、上記のような過補正に至ったものと判断される。心室期外収縮の二段脈などを含めて、補正に用いるべき心拍を特定するのが困難な場合は、不適切診断を招かないためにも無理な補正は行わない方がよく、自動計測結果に疑問がある場合は自身で計測し直すなど、丁寧な対応が必要である。abcdefghijklmⅠⅡⅢ計測ミス-3 Answer

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