臨床心電図解析の実際 ― 不適切自動診断編
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V1ⅠⅡⅢV4V5aVRaVLaVFV2V3V618ペーシングスパイクと思われる信号はまったく確認できないが、なぜ「人工ペースメーカ調律」という自動診断がもたらされたのであろうか。ペーシングスパイクに類似した波形として唯一考えられるのは、赤矢印()で示すV1誘導における小さなr波であろう。しかし、同じタイミングでV2~V6に見られる波形は明らかにR波で、コンピュータがペーシングスパイクと読み過ぎたと判断される。さらに、「完全右脚ブロック」でQRS幅が拡大していることも、心室ペーシングによるQRS拡大として読み過ぎ、「人工ペースメーカ調律」という誤診を生み出したものと考えられる。加えて、多くの自動診断心電計においては、本例のように「人工ペースメーカ調律」という誤った診断が先行すると、他の異常所見がすべてマスクされてしまうことも大きな問題である。本例においては、ペーシングスパイクを読み過ぎたことによって「完全右脚ブロック」「左軸偏位」「二枝ブロック」などの所見が表示されなくなった。ペーシング心電図に関しては、診断アルゴリズムの大幅な改良が必要であろう。読み過ぎ-7 Answer

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