臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
85/96

83第Ⅳ章 興奮伝導の異常・ブロック 等ブロック-7 Answer心房心室A1A2A3A4A5A6A7A8A9A10V1V2V3V4V5V6V7V8V9V10房室結節ⅡV2ペースメーカの刺激スパイクをわかりやすくするために、Ⅱ、V2誘導の連続記録の一部を縦方向に拡大して示す。まず、QRS波はいずれもペーシングスパイクが先行しており、心室ペーシング心拍であると判断される。次にRR間隔を順次計測していくと、V1~V2>V3~V4>V5~V6>V7~V8と徐々に短縮したのち、V9~V10で突然延長しており、Wenckebach周期の逆パターンであることがわかる。この間のV2~V3、V4~V5、V6~V7、V8~V9は1.02秒前後でほぼ一定である()。一方、P波に関しては奇数拍のA1、A3、A5、A7、A9はペーシングスパイクが先行しているが、偶数拍のA2、A4、A6、A8、A10はスパイクが見当たらないようである。すなわち奇数拍は心房ペーシング心拍、偶数拍は洞収縮と考えてよさそうである。P波とQRS波の関係を示したのが下段のラダーダイアグラムで、奇数拍は、心房刺激後一定間隔(AV delay:この場合は200msec)で心室刺激が入る設定に従って、正常に動作しているようである。偶数拍に関しては、洞結節由来の心房興奮(P波)が出現した際に、これをペースメーカが感知し、一定時間の後に(この場合は240msec前後のようである)、やはり心室刺激を行っている。ここではDDDのtrigger機能が正常に働いていると判断される。ちなみに、心室刺激後次の心房刺激を出すタイミング(VA delay)は820msec前後に設定されており、それ以内に心房興奮が現れた場合には、次の心房刺激が抑制されるinhibition機能も正常に動作していることがわかる。これらの所見から、ペースメーカのDDD機能は正常に働いていると考えてよさそうである。では、なぜ逆Wenckebach周期のような二段脈を呈したのであろうか。

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る