臨床心電図解析の実際 - 複雑な心電図の解析編
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72複雑な心電図の解析編ブロック-3 AnswerV1ⅠaVF矢印()を境に大きく様相が変化している。前半は2対1房室ブロックであるが、narrow QRSを示している。一方、後半は1対1伝導であるが、完全右脚ブロックのようである。P1P2P3P4P5P6R1R2R3R4R5Ⅰ心房房室結節心室Ⅰ誘導の一部を拡大した。QRS波形が突然変化した前後を拡大し、narrow QRSのR1、R2からwide QRSのR3~R5へと変わった部分の伝導様式を下段の図に示す。R1、R2は、それぞれP1、P3の洞結節興奮が正常刺激伝導系を通常の速度で伝導した洞収縮であると考えられる。P2は房室結節内でブロックされており、QRS波は脱落している。すなわち、R2までは2対1房室ブロックの状態と判断される。一方、後半のR3~R5はそれぞれP4~P6が1対1に伝導したもので房室ブロックはないが、心室内での伝導障害、すなわち完全右脚ブロックを呈している。右脚の不応期が長い()ために起こった現象で、R1、R2では2対1房室ブロックに伴ってRR間隔が長いため、興奮が一つ置きに心室に到達したときには右脚は不応期から脱しており、正常に心室内を伝導してnarrow QRSを示しているのに対し、R3~R5では房室伝導が改善したために、興奮が房室結節を通過して心室に到達したときには、右脚はまだ不応期にあり完全右脚ブロック波形を呈したと考えれば、一連の波形変化は説明可能である。なお、途中で房室ブロックが解消した理由は定かでない。

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