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心臓の病気について

心房粗動

大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 奥山 裕司

1.始めに

 心房粗動は、弁膜症や心筋症といった心房に負荷がかかるような心臓病がある場合や、高血圧のため心肥大がある場合などにおこりやすい不整脈です。いろいろと検査してもこれと言って異常の無い場合もあります。心房は1分間に240以上の回数で興奮(収縮)していますが、心室に伝わる割合が様々であり症状も多様です。

 心房粗動では心房の中に血栓ができて、それが剥がれて流れて行き、脳梗塞を発生することがあるため、少なくともずっと心房粗動が続いているような場合には血栓の予防薬を服用する方が良いです。

2.心房粗動とは

 正常な心臓では洞結節(電気信号の発生場所)から発生した電気信号は一方通行で心臓の端々まで伝わって行き消えてしまいます。次の脈は新たに洞結節から出てきた電気信号によって生じます。心房粗動では多くの場合右心房の中で、三尖弁輪という右心房と右心室の連結部分の周りを電気信号が回っている状態となっています(図1左)。それ以外のところを大きく回る場合もありますが、あまり多くはみられません。

図1

図1

3.心房粗動の症状

 心房粗動の症状は、心房から心室に伝わる電気信号の数によって異なります。心房が240/分(1分間に240回拍動)で興奮していて、4回に1回心室に興奮が伝わるとすると60/分(1分間に60回拍動)の脈拍数になります。よって動悸はあまり感じません。2回に1回心室に伝わるような場合には120/分(1分間に120回の拍動)の脈拍数になります。

このような場合では動悸として自覚されることが増えます。発作性上室性頻拍の場合は自然に止まることもありますが、心房粗動は一旦始まるとなかなか自然には止まりません。もともと働きが弱った心臓に心房粗動がおこると過重な負担となり肺に水がたまる心不全を発症することもあります。

4.心房粗動の診断

 心房粗動は心電図をとることで診断が行われます(図2)。心室に伝わる数が多い状態では、やや診断が難しい場合があるため、薬を使って心室に伝わる数を減らして心房の波の形をみやすくすることもあります。良い条件で心電図が記録できれば、多くの場合三尖弁を回る典型的な心房粗動か、それ以外のやや非典型的なものかの診断ができます。この診断(予測)は後述するカテーテル治療が行いやすいかどうかを判断する材料になります。

図2

図2

5.心房粗動の治療

①頻拍となっている場合の処置

 心室へ伝わる数が多く、頻脈となっている場合にはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬といった心室に伝わる信号の数を減らす薬を使います。心 室に伝わる信号の数が減ると、心房は心房粗動のままでも動悸症状は軽くなります。
点滴の薬を使って心房粗動を停止させるのは難しいことが多く、また抗不整脈薬を使うことで返って症状が重くなることもあります。

症状が強く、特に肺に水がたまって呼吸困難を伴っているような場合には、β遮断薬やカルシウム拮抗薬といった少し心臓の力を弱める作用がある薬は使わずに、電気ショック治療で心房粗動を止めることになります。

②心房粗動の予防、根治

 現在、心房粗動の予防効果が高い薬は残念ながらありません。
三尖弁輪の周りを興奮が大きく回る典型的な心房粗動では、電極カテーテルを使った手術(カテーテルアブレーション)の成功率が高く、手技に伴う危険性も少ないため現在最も勧められる治療です。この場合三尖弁輪から下大静脈にかけて数センチの距離を横断するように焼灼します(図1右)。約95%程度で治療効果があり、症状の再発は多くても10%程度までです。手術は局所麻酔下で平均的に1時間程度で行われます。三尖弁輪から下大静脈にかけての構造は患者さんごとに異なるため手術時間が長くなることもあります。 三尖弁輪以外のところを回る心房粗動では、多くの場合でコンピュータを用いた特別な装置を用いて診断をする必要があります。

 正確な診断が付けば多くの場合はカテーテルアブレーションによる治療が有効です。
 カテーテルアブレーションによる治療の合併症は一般に心臓の周りに出血する心タンポナーデ、正常な電気回路に傷が付く房室ブロック、脳梗塞などがありますが、合併症の発生は合計で1%以下とされています。他の不整脈に対するカテーテルアブレーションによる治療の場合に比べ、三尖弁輪を回る心房粗動のカテーテルアブレーションによる治療では心タンポナーデや房室ブロックが発生することは多くありません。ただ左心房内で電気信号が回る心房粗動のカテーテルアブレーションによる治療を行う場合には、脳梗塞が起こる可能性があります。

③血栓の予防

 心房粗動では心房細動ほどではないと推定されていますが、心房の中に血栓ができ、それが剥がれて流れて行き、脳梗塞を発生することがあります。

少なくとも心房粗動が長い間続いているような場合には、ワルファリンなどの血栓の予防薬を服用します。

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