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治療について – 植込み型除細動器(ICD)

植込み型除細動器(ICD)

広島大学病院心臓血管外科 今井 克彦

 「先生!心室細動です!!」「よし!除細動だ!!みんな離れて!!」「バーン!!」「オッケー!成功だー!」
多くの方がテレビのワンシーンでこのような場面をご覧になったことがあるでしょう。これは、一部には「電気ショック」と呼ばれている「直流除細動」という治療で、致死性不整脈を停止させるための最強で最後の手段です。最近では、公共施設などに「AED」という自動除細動器の設置が増えていることからご存じの方もおられるでしょう。

 心室頻拍や心室細動といった致死性心室性頻拍症の患者さんにとって、体内から電気ショックを行うことの出来る装置はこれらの不整脈による突然死を回避する最も有効な手段といえます。この装置は「植込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillators)」といわれ、「ICD」と略されます。ICDは、15年前にはほとんど救うことの出来なかった命を、現在では90%以上の高確率で救うことが出来るようになりました。

1.ICDとは?

 ICDは、折りたたみ式携帯電話ほどの大きさの装置で、鎖骨の下の前胸部に植込まれます。この装置は、血管を通して心臓内に留置されるリードと呼ばれる電線を通して常に自己の脈を監視しています。(図1)。脈拍が異常に早くなる(頻拍といいます)と、心臓(の中の左心室という部屋)が1回に体に送り出す血液をため込む時間が不足してしまうため、結果として単位時間あたりの全身に送られる血液の量が不足してしまいます。この状況を放っておくと死に至ります。ICDはこの危険な頻脈を感知すると、心臓に電気ショック(直流除細動)を与えることにより頻脈を停止して正常な脈拍に戻すことにより、突然死を回避します。
 ICDはペースメーカの働きも持っています。脈が異常に遅くなる(徐脈といいます)状況を感知すると、心臓をペーシングして一定以上の脈拍を保つことが出来ます。
 多くのICDは、異常な脈拍を記録することが出来ます。この記録は後から取り出して参照することが出来るので、不整脈を専門とする医師や看護師、臨床工学技士などが異常な脈拍が起こったときの症状などを患者さんに詳しく聞き取る事が出来ます。

 頻脈性不整脈は電気ショックを与えずに「ペーシング」のみで正常な脈に戻せる場合があります。不必要で過剰な電気ショックを避けるために、この「ペーシング」による治療(抗頻拍ペーシングといいます)がICDにプログラムされている場合があります。ペーシングによる電流は通常患者さんには感じることが出来ませんが、電気ショックは「まるで胸を強く蹴られたようだ」と言われるように、強い衝撃を感じるため。抗頻拍ペーシングが可能な状況であればこれを用いることがあります。

図1 植込み型除細動器 (ICD)

図1 植込み型除細動器 (ICD)

2.ICD治療を受ける適切なタイミングは?

 ICD治療が必要な場合とは、心室頻拍や心室細動などの致死性心室性頻拍症を既に経験されている方(二次予防といいます)や、これらの不整脈が今までは無かったものの今後これらによる心臓突然死のリスクが高いと考えられる方(一次予防といいます)が対象となります。一次予防の対象となる多くの方は、心臓の病気(基礎疾患:心筋症、冠動脈疾患など)と不整脈を併せ持っています。こういった方々は、特に心臓突然死のリスクが高いためにICD治療の適応となるのですが、不整脈による症状が全くない方もいます。
 ICD治療の適応を考える際、不整脈を専門とする医師(不整脈専門医など)は以下のような心臓の病気などがあるかどうかを検査を行って調べます。

●過去に短い時間でも心臓が止まった(心停止)ことがあるかどうか。

心室頻拍の有無。
心室頻拍:心室(右心室と左心室=心臓の4つの部屋のうち下側にある2つの部屋)を起源とする速い不整脈(頻拍)。

●心室細動の有無。
心室細動:心室頻拍と似ているが心室頻拍よりも更に早く不規則で混沌とした不整脈。

●EF(駆出率)が35%以下の場合。
駆出率は左心室が一回の心臓の収縮でどのくらい血液を送り出せるかを比率で表したものです。正常の心臓では、左心室に溜まった血液の半分強の血液を送り出すことができ、比率としての正常値は55%以上とされています。

●遺伝性の心臓疾患による心臓突然死のハイリスクがある場合。

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