日本不整脈心電学会

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2018年8月

高月誠司(慶應義塾大学医学部循環器内科)

Q49歳女性。数年前から下肢のむくみ、数ヵ月前から労作時息切れが出現し来院した。心電図を示す。考えられる疾患はどれか。
1) 慢性肺血栓塞栓症
2) 急性肺血栓塞栓症
3) 不整脈源性右室心筋症
4) 前壁中隔心筋梗塞
5) 肥大型心筋症
回答と解説はこちらから   

【解答】

1) 慢性肺血栓塞栓症

【解説】

QRS幅は120msecで、V1のQRSの後半成分は陽性で、右脚ブロックパターンである。I誘導のS波は幅広く、右脚ブロックに典型的だが、V6のS波は幅が狭く、通常の右脚ブロックのパターンとは異なる。前胸部のQRS波の初期成分に注目すると、R波のprogressionは著しく不良で、左室心筋の起電力の低下が示唆され、V3~V6まで深いS波、V6のR/S比<1と合わせて、右室肥大の所見である。前胸部の全誘導とII、III、aVF誘導で陰性T波を認め、重度の右室肥大を示唆する。本例では+100°と軽度の右軸変位だが、右室肥大の診断は①V1でR/S≧2かつV1のR波≧5mV、②110°以上の右軸偏位、③V6のR/S<1のいずれかを認める際に考える。正解は右室肥大をきたす1)の慢性肺血栓塞栓症である。

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