日本不整脈心電学会

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2017年12月

髙橋尚彦(大分大学医学部 循環器内科・臨床検査診断学講座)

Q19歳男性。友人とテレビ鑑賞中に意識消失した。10分後にAEDが到着し心室細動を検知し作動した。搬送後の低体温療法施行中(A)および復温後(B)の心電図を示す。Aに比した場合のBの心電図所見として正しいのはどれか。
a. 下壁誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)のJ波が減高している。 b. QT間隔が延長している。 c. 左側胸部誘導(V5,V6)のT波が平低化している。 d. PQ間隔が延長している。 e. 左側胸部誘導(V5,V6)のJ波が顕在化している。
201712-1
回答と解説はこちらから   

【解答】

a

【解説】

主要心電図所見
1) 下壁誘導におけるJ波(低体温時に顕著で復温により減高)
2) 左側胸部誘導(V5,V6)におけるJ波(低体温時に出現し復温により消失)

復温時(心電図B)において,下壁誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF)でJ波(早期再分極)を認める。心室細動をきたしていることより、J波(早期再分極)症候群と診断される。低体温時(例:偶発性低体温症)には,房室伝導抑制(PQ間隔延長),心房細動,陰性T波,QT延長,洞性徐脈などが認められる。本症例においても,低体温療法時(心電図A),下壁誘導のJ点上昇が顕在化し,また左側胸部誘導にJ波が出現している。QT間隔およびPQ間隔は延長し、左側胸部誘導のT波は平低化している。これらの所見は,復温によって減弱もしくは消失している(心電図B)。

〔心電図は,Kondo H, Shinohara T, Takahashi N: J Arrhythm, 2015;31:60~63から改変引用〕

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