日本不整脈心電学会

HOME > 教育/出版 > 心電図クイズ > 2017年08月

2017年08月

安部治彦(産業医科大学医学部不整脈先端治療学)

Q症例は47歳、男性。生来健康で事務仕事に従事していたが、最近仕事が忙しく、睡眠不足が続いていた。発作性心房細動があり、3年前から近医でシベンゾリンの内服投与を受けていた。半年前から仕事中に意識消失発作を繰り返すようになった。意識消失時間は1分程度であるが、外傷の既往はなかった。目撃者の情報では、意識消失時には開眼しており、時にけいれん発作を認めることもあったという。精査目的で受診した。植込み型心電計(ILR)が挿入され、植込み後3ヵ月目に再度同様の意識消失発作を認めた。ILRから得られた心拍トレンドおよび心電図実波形を示す。ILRの心電図所見から考えられるものはどれか。
1. 洞不全症候群
2. 血管迷走神経性失神
3. てんかん発作
4. 心因性偽性失神(ヒステリー)
5. 低血糖発作
201708-1
回答と解説はこちらから   

【解答】

2と3

【解説】

ILRの所見から、心停止をきたしており、これが意識消失の原因と考えられる。心停止発生直前の心拍数の変化は、まず一過性に心拍数が上昇(洞性頻脈)し、その後徐々に心拍数が低下(洞性徐脈)して心停止に至っていることがわかる。これは、一過性の交感神経緊張により心拍数が増加し、その後副交感神経機能の亢進により、徐々に心拍数が低下して心停止に至っていることが推察される。自律神経反射による心停止の典型的な発症様式を示している。洞機能不全では、心房のoverdrive suppressionで洞結節が抑制されるため、直後に心停止となり、本症のごとく徐々に徐脈に至ることは通常はない。血管迷走神経性失神やてんかん発作(特に、側頭葉てんかん)は、自律神経により心停止や高度徐脈が発生するが、意識消失時には開眼していることが多い。心抑制型の血管迷走神経性失神は、しばしばけいれん発作を伴うことも知っておく必要がある。ヒステリーでは通常閉眼している。低血糖発作は意識消失時間が長い。

TOP