日本不整脈心電学会

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2017年03月

池田 隆徳(東邦大学大学院医学研究科循環器内科学)

Q24歳の女性。数ヵ月前から、階段の昇降時や運動時に息切れと動悸が生じるようになった。心配になり外来を受診した。聴診で心音の異常と心雑音が指摘された。心電図を示す。心電図所見から最も疑われる疾患はどれか。
a. 急性心膜炎
b. WPW症候群
c. 心房中隔欠損症
d. タコツボ心筋症
e. Brugada症候群
201703-1
回答と解説はこちらから   

【解答】

c. 心房中隔欠損症

【解説】

主要心電図所見
① V1誘導でrSR’型、QRS幅は0.12秒以内
② Ⅰ・V5・V6誘導でやや深いS波
③ aVL誘導でかなり深いS波

それぞれの疾患の心電図の特徴と臨床背景(好発年齢や聴診所見など)を知っているとすぐに解ける問題である。V1誘導でrSR’型が認められ、QRS幅が0.12秒以内であるため、不完全右脚ブロックを呈している。Ⅰ・V5・V6誘導でやや深いS波が認められるが、不完全右脚ブロックの所見として矛盾しない。aVL誘導でかなり深いS波を認めるため、軽度の右軸偏位を呈している。不完全右脚ブロック自体は異常といえるべき心電図所見ではないが、心房中隔欠損症ではよく認められる所見として知られている。心房中隔欠損症は左右短絡路を有する先天性心疾患であり、重症例では肺高血圧症を合併する。本症例ではⅡ誘導で先(尖)鋭P波が認められず、その可能性は低い。他の選択肢の心電図の特徴は、急性心膜炎が(aVRを除く)全誘導でのST(凹型)上昇、WPW症候群がデルタ波、タコツボ心筋症が巨大陰性T波、Brugada症候群がV1・V2誘導での(coved型)ST上昇であり、容易に除外することができる。

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